TKA術後は、膝周囲の炎症と腫れにより痛みを訴える例が多いです。
術後疼痛が原因で中々膝を曲げることでできず、術後の可動域獲得に難渋するケースも経験すると思います。
こんな時、術後可動域の予測推移がわかれば、時期ごとに必要な獲得角度がわかり、
患者さんへの説明も説得力が出てきます。
今回は、TKA術後の時期ごとの可動域の推移に関する文献をもとに術後必要な可動域を検討していきたいと思います。
1.人工膝関節全置換術術後の可動域に関する文献
今回は一つの文献をもとにTKA術後の可動域改善の目安について考えていきます。
紹介する文献は、「人工膝関節置換術後の屈曲可動域予測」という題で、TKA術後の可動域に関して具体的な結果を出しています。
参考文献
戸田 秀彦 他:人工膝関節置換術後の屈曲可動域予測 理学療法科学 26 巻 (2011) 3 号
文献からいくつか重要なワードを抽出します。
①術後のROM改善は術前の状態に影響される
術前ROMが良いものは術後も良好であり、反対に術前ROMの悪いものは術後のROMも不良であった。
「術後の可動域は術前の状態に左右される」
このようなという結果となっています。
この結果は賛否あるようですが、
膝周辺の構造を考えると、上記の結果が妥当であると思われます。
TKAの手術で手を加えるのは骨構造に対してです。
軟部組織のバランスは手術ではどうこうなりません。
つまり、術前の変形が高度である場合、それに伴って軟部組織バランスも同様に変化します。
よって、骨構造が改善されても軟部組織は術前のままであるわけなので、術前の可動域が悪いケースはそう簡単に術後可動域を得ることは困難であるという事が予想されるわけです。
であれば、術前の変形が軽度の場合は術後の可動域は良好になるのでしょうか・・・?
その場合は、術前から可動域も良好であるし、手術適応とならないでしょうね。
②TKA術後の可動域改善は術後3週までにある程度完結する
術後1週から2週の間に全回復の約50%、2週から3週の間に約25%が回復し、1週から3週までに全回復の約75%の回復を認めたことになる。つまり、術後1週から2週のROM変化とROM回復率により、術後3週以降のROM回復を概ね予測することが可能であり、一律の角度による目標設定ではなく、個々の患者のROM目標を設定することができる。
この結果から、TKA術後の可動域の改善率は術後3週までに概ね完結することがわかります。
つまり、術前の膝屈曲可動域が120°であった場合は、術後3週までに75%である屈曲90°までの可動域が獲得できていればその後は順調に、術前の可動域までの改善は得られるということになります。
TKA術後の可動域訓練に関する記事はこちらから。
③まとめ
➢TKA術後の可動域訓練は術後3週目までが肝になる!
➢術前の可動域は必須の確認事項(どこも大腿評価はしていると思いますが・・・)
➢術後早期の可動域訓練は必要であるが、どのように改善させていくかがポイントになる
↳ガイドラインでは「自動運動中心」が推奨されており、
多くの文献でも「他動運動よりも自動運動が推奨されている」
↳しかし、自動運動だけでは改善が困難な場合もあることを念頭に置いておく必要がある
(組織の問題・患者のキャラクターの問題など・・・)
➢術後の炎症のコントロールは非常に大事
↳冷やし過ぎは創傷治癒の遷延に繋がる
↳基本的には訓練後に短時間アイシング実施を繰り返す(長時間のアイシングはNG)
アイシングなどについて詳しく書いた記事はこちらです。
2.まとめ
今回は、TKA術後の可動域改善について文献をもとにまとめていきました。
TKAに限ってはリハビリを行う上でのリスクは比較的少ない方です。
だからってリハビリする人は誰でもいいってわけではありません。
膝はもともと可動性の大きい関節であり日常生活での使用頻度は非常に高いです。
故に、違和感を感じやすい部位になります。
「術後、歩きにくい」・「立ちにくい」などの訴えは非常に多いです。
その背景には今回紹介した術後の可動域改善が大きく影響しています。
患者さんの訴えを聞く限りでは、術後可動域が順調に改善することで満足度は今よりももっと高くなるはずです。
※文献ではTKA術後の20~30%の患者は満足していないという結果が出ています
そのためには、セラピストがTKA術後の可動域改善に対し、しっかりアプローチできることが望まれます。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
コメント