TKA術後の方に対して入院中にしなければならないリハビリとは?

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この記事はTKAに関わるセラピストに対して書いた記事です。

「近年、人工膝関節置換術後患者において患者立脚型アウトカムを用いた評価が主流となっている」

最近、このような意見を述べている文献を見かけます。

TKA術後初期は熱感や腫脹により「足の置き場がない」とか「とても重たい」などの訴えが聞かれます。

しかし、日が経つにつれ、術後の炎症が落ち着いていき次第に楽になっていきます。

そこに合わせてリハビリも訓練を進めていくわけですが、やはり「人工物」を入れているわけなので、「違和感」であったり「動かしにくさ」なんてものは比較的長期間訴えとして聞かれることがしばしば・・・

「完全に自分の足として歩けているか?」

ここに関しては、入院中に完結できる問題ではないと言えます。

人工関節を入れる患者の訴えを改善させるのはどうしても長期的な時間を要することが多いです。

そして、そういった訴え自体はリハビリではなく実生活で馴染ませていくことが早道であったりする問題が多くあるのが現状です。

こういったギャップが生じていることで「不満に思う人」が出てくるのでしょう。

今回は、そういった「術後の満足度」を高める為に必要な評価についてシェアしたいと思います。

1.TKA術後患者の2割は満足していない!?

日本ストライカー(株)は、2016年9月に、膝・股関節の疾患により人工関節手術の提案を受けた全国40~69歳男女(560人)に対して人工関節置換術に関する調査を実施しました。

その中では、TKAを受けた術後患者の約2割が不満足であるといった研究結果がでています。

TKAの手術自体は使用機種や術式など様々な側面から年々進化しています。

その証拠に、術後の膝の可動域や在院日数はここ数年で劇的に改善されてきています。

もともと、完成度の高い手術(他と違い術前の状態から改善する手術)ですから、求められるもの(期待度)も高くなると思いますが、上記で挙げた不満足度が20%もあるということは人工関節を進めていく上で大きな障害になります。

そこで、近年では患者主体での評価表が普及してきています。

患者の思考がわかれば何に満足していないかがわかってきますからね。

こういった背景により、今までは術後の可動域の変化や筋力の変化、ADLに重点を置いていたものが徐々に患者の視点での評価が重要視されてきているわけですね。

患者主体の評価表は以下に紹介します。

患者報告アウトカム(PRO)の種類

PROに関してはさまざまな種類の評価法があります。

➢WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities osteoarthritis index)

➢The Oxford score

➢SF-36

➢JCOM(Japanese knee osteoarthritis measure )

➢PCS(Pain Catastrophizing Scale)

➢FreKAM-J( The Fremantle Knee Awareness Questionnaire)

このほかにも多くの評価表が出てきています。

多くは海外で使用され効果が認められたものが、日本でも適用されてくるといった流れが多いようです。

そのため、日本語版○○というような形で、実用性を検証しているものが多いです。

こういった患者主体の評価を行うことで、患者の満足度向上に繋がってくると言えます。

2.近年のTKA術後の在院日数について

では、TKA術後の満足度の結果に対して、TKA術後の在院日数ってどうなんでしょうか?

近年のTKA術後の在院日数ですが、基本的には「日常生活が送れるようになったら退院」というのが主流になっています。

これはTKAに限らず、整形外科疾患全般に言えることです。

つまり、

➢長い距離歩けるようになった・歩きやすくなった

➢痛みが完全になくなった

などの細かい課題の解消までは待ってくれないということです。

そんな近年の現状がある中で、

TKAなどの人工関節系の手術では術後早期からの荷重が可能であることから、他の手術よりもかなり早い段階での退院が勧められています。

(THAは禁忌肢位がありますが指導にすることで対応可能)

TKA術後であれば平均的には2~4週間で退院を迎える施設が多いですが、早い所では術後1週間で退院するという施設もあります。

このように、在院日数が長ければ長いほど患者の満足度が上がるわけではありませんが、入院できる日数が格段に短くなっていることは多少なりとも患者満足度に影響しているものと思われます。

3.上記を踏まえて入院中にしなければならないリハビリとは?

これまでのリハビリと同様、早期からの可動域訓練や筋力訓練は必要です。

術後早期から膝を動かさなければ固まってしまいますし、筋力も落ちていきます。

それでは、生活を送ることが困難になり、手術前より身体機能の低下をきたしてしまいます。

身体機能へのリハビリを行いつつ、並行して行っていくべきなのが、

「不安への介入」・「患者指導」

この2点がTKA術後の患者には必要になってきます。

不安への介入

術後は様々な不安が出てきます。

患者さんの訴えは、関わる時間が圧倒的に長いリハビリのセラピストが対応する必要があると思います。

「膝は曲がるようになるのか?」

「痛みは取れるの?」

「このだるさはいつ無くなるの?」

「歩けるようになる?」

などなど・・・

具体的な問題に関してはDrと患者さんの間の橋渡しをする役割を果たすようにします。

そして、それ以外の今後の見通しであったり、経過に関しては患者さんにわかりやすくセラピストが説明していく必要があると思います。

実際に、どんな問題でも、「先の見通し」がないと不安に感じてしまうものです。

ちょっとした対応の違いで「不安の大きさ」が変わってきます。

患者さん側からしたら、近年の早期退院の流れは、しっかり説明をしていないと

「追い出された」とか「治っていないのに退院か」

といった不満が募る結果になってしまいます。

今後の見通しを含めて「患者の不安」に対してセラピストは積極的に介入していく必要があると思います。

ちなみに、不安が強いと、痛みも慢性化しやすくなります。

痛みが慢性化すると、本来の術後の経過とは違う道をたどる結末になってしまいます。

患者指導

患者指導では、データをもとに術後の経過を説明していきます。

そして、最終的にセルフマネジメント能力を確立させて退院を迎えるといった流れが重要になります。

□術後の筋力の推移(筋力低下はどの時期にピークを迎えてどの時期に向上するか?など)

□術後の可動域の推移(目標可動域は?・どの時期にどれくらい曲がればいい?など)

こういった知識を患者自身に理解を促していくことが在院中にやるべきことであると思います。

実際に、筋力に関しては、術後6か月までは筋力は弱い状態にあると言われています。

TKA術後は「大腿四頭筋のトレーニングが非常に大事である」という文言は、整形外科の病院で働くスタッフであれば一度は聞いたことがあると思います。TKA術後だけに留まらず、変形性膝関節症の場合でも同様です。では、なぜ大腿四頭筋のトレーニングが大事になるのでしょうか?その背景には、TKA術後患者を長期間調査した結果、大腿四頭筋のトレーニングが重要と判断されたからです。今回は、その部分を少し掘り下げて記事にしていきたいと思います。

入院中はこういった結果が出ていることを説明し、退院後もセルフトレーニングの継続を促すことが術後の成績を良くするためには重要なことであると言えます。

そういった細かい調整を行うのはセラピストの役割であると言えます。

4.最終的にTKA術後の本当のゴールとは?

これまでは、TKA術後の在院日数について説明し、入院中にセラピストは一体何をすべきなのかについて説明していきました。

最後は、TKA術後の最終的なゴールとは何なのか?について触れて終わりにしようと思います。

TKA術後リハに関わっていると、多くの患者さんで「違和感」などが聞かれます。

そしてこの訴えは、入院中には中々改善されません。

これは人工物を入れる手術を行う上で必ずと言っていいほど起こり得る問題です。

人工関節系の手術は他の手術と違って何が違うかというと、

「自身の関節を人工物と入れ替える」

ってことです。

骨接合術などでもプレートを入れたりスクリューを入れたりと人工物が入りますが決して「入れ替える」ことがありません。あくまで補助です。

それに対しTKAは完全に入れ替えるわけですから、やはり違和感のレベルは他とは大きく違ってくるのではと思います。

こればっかりは、自分で経験していないので憶測レベルになってしまうのですが・・・

そんなTKAなどの人工関節系の手術に関して言えば、本当のゴールは

「手術した関節を意識しないで生活できること」

となるわけです。

日常生活で手術した関節を意識しないでいることが「究極のゴール」である

Behrend ら(2012)

専門職をいる以上、具体的により専門的にゴール(目標)を立ててしまいがちですよね。

でも、本当に術後の患者さんが実生活を送る際に思うのは「違和感がない」とか「自分の足のように動く」とかそんな所が重要であるのではないでしょうか?

一番最初の話に戻りますが、

こういった背景により近年、自記式質問票により患者の視点での機能や能力を評価する患者報告アウトカム(patient-reported outcome:PRO)を用いることが重要視されているわけですね。

術後に医療者側がどうなっているか判断することは非常に大事です。

客観的に見て”良くなっているか”・”悪くなっているか”、ここは必須の評価になります。

ですが、満足度の観点から考えると、

「患者からの評価」・「自身の評価」も重要になってくる訳です。

”どのように感じるか”・”不安はどうか”

なんかですね。この辺は手術をした本人にしかわからない問題です。

5.まとめ

今回は、以下のことについてまとめていきました。

➢術後の満足度について

➢その満足度を高める為に近年患者立脚型の評価法が普及してきている

➢近年のTKA術後の在院日数はかなり短くなっている

➢在院中にセラピストがすべきこととは?

➢TKA術後の最終的なゴールとは?

今後のTKAに関しては、「患者がどう思っているのか」について深く追求していく必要がありそうですね。

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。