どうも。
今回もトリガーポイントシリーズです。
腹筋群は腹直筋・内腹斜筋・外腹斜筋などをまとめたものを言います。
腹部の筋は、上記以外にも”腹横筋”という深層の筋も存在します。
今回紹介する腹筋群のトリガーポイントは、腹横筋を除く3つの筋群の話になります。
腹筋群は腹部前面及び側面に位置しています。
主に、体幹の前屈に作用し、上体を起こしたり身体を限界以上に反らないように作用します。
この腹筋群がトリガーポイントにより機能不全を引き起こすと、身体を反ることが困難になります。
今回はそんな腹筋群のトリガーポイントについて掘り下げてみたいと思います。
1.腹筋群の解剖と機能について
腹筋は、腹部に前面と側面を覆っています。
腹直筋は、垂直で中央にある厚板状の筋で、下部の肋骨と恥骨に付着します。
図:腹直筋~内外腹斜筋
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より一部改変し引用
腹筋群の走行について
腹斜筋は、3層に分かれた腹部側面の筋であり、各線維はタイヤの層のように異なる角度を向いています。
【腹筋群の走行のイメージ】
腹直筋 ⇒ 上下に走行
外腹斜筋 ⇒ 斜めの走行(外から内側に向かって下行する感じ)
内腹斜筋 ⇒ 斜めの走行(外腹斜筋の反対)
※外腹斜筋と内腹斜筋の2つで体幹の側面でクロスするような走行となる
腹筋群の機能について~体幹の制御としての機能~
腹筋群は、身体を前方に曲げる(体幹の屈曲)、捻る(体幹の回旋)、横に曲げる(体幹の側屈)など多様なの動きを再現します。
また、後方に反りかえる際に、過伸展を防いだり、背骨を安定させ、あらゆる種類の活動中に身体を支える役割を担います。
腹筋群の機能について~呼吸補助筋としての機能~
さらに、腹筋群は呼吸補助筋としての機能も持ち、正常な呼吸及び努力呼吸において、腹筋群は肺から空気を出すのを助けています。
※普通の呼吸ではわかりにくいですが、大きく息を吐くときと腹筋群が働いているのが良くわかります
腹筋群の機能について~圧力の提供~
また腹筋は、出産・嘔吐・排尿および排便のための圧力を提供します。
要するに「力む・いきむ」時にこの腹筋群は強く作用するということになります。
自然分娩の過度の力みは女性の腹部に多くのトリガーポイントを残すことがあります。
腹筋群のトリガーポイントは、腹部・側部・背部に痛みを生じるだけでなく、腹腔内の臓器と男女の生殖器に痛みを送ります。
2.腹筋群のトリガーポイントにより起こり得る「症状」について
腹筋のトリガーポイントは、外部と内部(内臓関係)の腹部痛の原因となります。
以下に、腹部を上・中・下に分けて3つの部位別に起こり得る症状を紹介していきます。
※あくまで可能性の問題であり、確実にそういった症状が出るというわけではございません。
上腹部のトリガーポイントが影響して起こる「症状」
図:上部腹筋群のトリガーポイントについて
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より一部改変し引用
●胸やけ
●胃酸の逆流
●食道炎
●食堂裂孔ヘルニア
●胆石
●胃潰瘍
●十二指腸潰瘍
●心臓病
●消化不良
●吐き気
●噴出嘔吐
●食欲不振
基本的には、腹部上方に存在する内臓の問題が多く見られます。
また、消化器系の症状が中心となっています。
消化器系に問題がある方は、上部の腹筋群のトリガーポイントを探してみてはいかがでしょうか?
中腹部のトリガーポイントが影響して起こる「症状」
図:中部腹筋群のトリガーポイントについて
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より一部改変し引用
●疝痛
●胃痙攣
●慢性下痢
●腹部における過度のガス
●膨張感・膨満感
●灼熱感
●虫垂炎に類似した痛み(右下腹部に限局した痛み)
トリガーポイントが右下腹部の虫垂の領域で起きると、虫垂炎に似た痛みを引き起こすこともあります。
また、上腹部に比べて「腸」関連の症状が多くなっています。
下腹部のトリガーポイントが影響して起こる「症状」
図:下部腹筋群のトリガーポイントについて
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より一部改変し引用
●過敏性腸症候群
●大腸炎
●子宮内膜症
●鼠径ヘルニア
●排尿のコントロール不良
●夜尿症
●下腹部や卵巣・子宮・膣で感じる月経痛
ストレスになる夜尿症は、腹筋下部のトリガーポイントが原因の可能性があります。
おねしょで子供をしかることで与えられたストレスは、腹筋トリガーポイントを増悪させ、また成人が不意に夜尿症を経験する場合もトリガーポイントが問題に関与していることがあります。
腹筋下部のトリガーポイントが生殖器まで関連痛を送る場合は、不必要な苦痛が多く生じます。
下腹部や卵巣・子宮・膣で感じる月経痛は、腹筋下部のトリガーポイントが原因の可能性があります。
腹筋から送られる背部への関連痛は、非常に一般的で、広範囲にわたって水平な帯状に出現します。
これは椎間板性の疼痛パターンと類似しており、脊椎の問題と間違われる可能性もあります。
図:腹筋群のトリガーポイントと背部痛の関連について
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より一部改変し引用
背部痛だけを考えていると、腹筋からこの痛みは来るとは予想がつかないものと思われますが、深呼吸すると痛みが増す背部痛は、腹部トリガーポイントの兆候の可能性があるため、評価の一つとして頭に入れておきたいところですね。
3.腹筋群のトリガーポイントが形成される「原因」について
ここでは腹筋群のトリガーポイントが形成される原因についてまとめています。
腹筋群は生体として生きていくうえで多くの事柄と関連しているため、原因は多岐に渡ります。
無理をし過ぎている(オーバーユース)
仕事や運動におけるオーバーユースは、腹筋のトリガーポイントを生じさせます。
※オーバーユース=使い過ぎ・酷使
過度の腹筋運動とレッグアップは、問題を起こすことがよく知られています。
スタイルをよくするために腹筋を鍛えるオーバーユースもトリガーポイントの発生を保証するようなものです。
強く、柔軟な腹筋は、腰部を補助し健康向上に役立つが、トリガーポイントを残したままエクササイズを行うことは症状の悪化を招く結果となりかねません。
不良姿勢
捻転位置で座る、長時間の座位、慢性的な咳、感情的ストレスのすべてが腹筋のトリガーポイントを引き起こします。
また、重いリュックサックを運ぶことで腹筋が酷使されることも報告されています。
メンタルの不安定さ
心配事は腹筋にトリガーポイントを生じさせる原因となります。
またストレスを過度に感じると腹壁も緊張しトリガーポイント形成を助長します。
慢性的な咳嗽
長引く咳は、呼吸補助筋でもある腹筋群にトリガーポイント形成を促進させます。
内臓疾患
腹筋のトリガーポイントは、内臓疾患でも発生し、疾患が回復した後も痛みが継続する理由となります。
例えば、胆嚢障害は、腹筋と脊柱起立筋にトリガーポイントを生じさせ、永続させます。
不調な胆嚢は腹部と肩甲骨領域まで関連痛を送り、逆に腹筋のトリガーポイントからの痛みは、胆嚢痛のように感じられます。
手術による侵襲
腹部手術のかなり後まで続く痛みは、、手術自体が引き起こしたトリガーポイント由来だと考えられます。
つまり、手術による侵襲が腹筋群にトリガーポイントを形成させ、創部が修復した後もトリガーポイントだけが残存し、いつまでも症状を引き起こすということです。
4.まとめ
今回は腹筋群のトリガーポイントについてまとめていきました。
腹筋群のトリガーポイントは内臓疾患との関連性があり、呼吸や運動でも酷使されがちな筋であることがわかりました。
つまり腹筋群は大抵の人に潜在性のトリガーポイントが形成されている可能性があるということです。
東洋医学では腹部周囲は消化器系と関わりがあるといわれており、
腹壁の緊張=消化器系の問題
として捉えます。
現代はストレス社会であり、常にストレスと関連の強い消化器系に負担をかけています(食生活の問題も大いにあります・・・)。
こういった問題も腹筋群にトリガーポイントが形成される原因になるのではないでしょうか?
それでは本日はこの辺で!
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
コメント