こんばんは。
kabosuです。
今回は
筋膜の繋がりを治療に活かす「アナトミートレイン」について
まとめていきたいと思います。
最近、東洋医学の「経絡」について記事にすることが増えています。
この中で、経絡アプローチの具体的な内容にふれていきました。
その中で全てではありませんが、
「”経絡”と”アナトミートレイン”には関連性があり、アナトミートレインも理解することで筋肉へのアプローチがやりやすくなる」
と説明しました。
経絡と聞くと少しイメージがしにくいし目に見えないものであるため信用できないという人もいると思います。
しかし筋膜の繋がりのあるアナトミートレインであれば目に見えるしイメージしやすいもの(筋や筋膜)になりますので理解が深まりやすくなります。
このように少し理解しづらい”経絡”を”アナトミートレイン”に落とし込んで理解していくと身体への理解がより深まってきます。
今回はそんな経絡とアナトミートレインをリンクさせ身体への理解を深めていきたいと思います!
まずはアナトミートレインの理論から!という方はこちらからどうぞ。
1.まずはアナトミートレインについて
アナトミートレインとは、体中に張り巡らされた筋・筋膜の網を通して、姿勢や動作の安定がどのように得られていくのかを解説する画期的な理論です。
人体を走る「筋筋膜結合の経線」を鉄道モデルに見立て、姿勢・運動機能の制御、ひずみによる機能障害の発生のしくみを解説しています。
これまでは、解剖学の一般的な解説は筋を単独なものと捉え、個々の筋について論じられてきました。
しかし、実際にはそれらの筋はすべて体内で複合的に繋がっているわけで、
人間の動作や姿勢の改善を行う上でも、それら筋を複合的に捉えていかなければならないということがこのアナトミートレインの理論の着眼点です。
2023年現在、アナトミートレインは第4版まで改訂されています。
2.アナトミートレインの「ライン」と類似している「経絡」
ここからはアナトミートレインの「経線」と類似している東洋医学の「経絡」を挙げていきます。
調べていくと、
「関係性がある」という意見
や
「全く別物だから混同すべきではない」
という意見があります。
ただ実際に、アナトミートレインの著者であるトーマス・W・マイヤース自身が、
アナトミートレインと経絡が類似していると認めています。
※第一版では否定的な内容でしたが、第二版では関連性を述べています。
では、以下に図とともに解説していきます。
体幹・下肢のライン
①浅後線と膀胱経
身体の後面で浅層部分の組織が連結した「浅後線」と身体の後面を通る「膀胱経」
対象となる筋肉
●帽状腱膜・頭皮の筋膜
●脊柱起立筋
●仙結節靱帯
●ハムストリングス
●腓腹筋・アキレス腱
●足底腱膜と短趾屈筋
【姿勢・運動機能】
浅後線の役割は、身体を完全な伸展状態に維持し、前方に屈曲する傾向を防ぐことにあります。
また、姿勢の維持(伸展)に関与するため、収縮速度が遅く、持続的な収縮機能のある遅筋が多いです。
生まれてくるときは強い内向的な屈曲状態です。それに打ち勝って身体を起こすのが浅後線の役割となります。
【ワンポイント】
膀胱経は身体の後面を通るため前屈制限をきたします。
この場合、浅後線を利用してアプローチします。
①おでこをもむ(帽状腱膜をほぐしていくということです)
②ゴルフボールみたいな固いもので足裏をほぐす(足底腱膜をゆるめます)
どちらも数分間行うと変化が出ます。
このように一つの部位のリリースがライン上にある固さに作用します。
ただ大本の問題でなければすぐに効果は無くなってしまいます。
変化があればそのライン上に大本の問題があるということなので、ライン上にある組織の問題を評価していきます。
なにも手掛かりがない所からラインを理解しておくだけで問題点の限局がしやすくなってきます。
②浅前線と胃経
身体の前面で浅層部分の組織が連結した「浅前線」と身体の前面を通る「胃経」
対象となる筋肉
●頭皮の筋肉
●胸鎖乳突筋
●胸骨筋
●腹直筋
●大腿四頭筋
●膝蓋靱帯
●長・短指伸筋、前脛骨筋
【姿勢・運動機能】
浅前線の姿勢機能は、浅後線とバランスをとることで、重力線より前方にある骨格部分、
すなわち恥骨・胸郭・顔面を引き上げるために、頭部から張力で支持することにあります。
浅前線の筋筋膜は、直立時の膝の伸展を維持します。
浅前線の筋は、人体の前面を飾る柔らかくて敏感な部分を防御するのに備えています。
腹腔内臓は浅前線の筋筋膜の張力によって保護されています。
様々な関節において、急激で強い屈曲運動を起こすために、浅前線のには速筋線維が多く含まれており、持続性の浅後線と速反応性の浅前線との相互作用により運動のバランスをとっています。
【ワンポイント】
浅前線・胃経の短縮で身体は屈曲方向で固まります。
なので体幹伸展の可動域制限が出ます。
胃の不調や悩み事が多いなどの問題があって身体が反れなくなっている場合は、
胃経の問題を予想します。
同時に腹筋や大腿四頭筋の緊張が強ければ、浅前線とも関連していることがわかります。
アプローチ方法は、経絡の走行を意識していきます。
大腿四頭筋に対して介入する場合、体幹近位部から遠位部に向かってリリースしていきます。
方向性を間違わなければ大きな力はいりません。
浅前線について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
③深前線と腎経
身体の前面で深層部分の組織が連結した「深前線」と身体の前面を通る「腎経」
対象となる筋肉
●後脛骨筋・長趾屈筋・長母指屈筋
●膝窩筋
●後大腿筋間中隔・内転筋群
●骨盤底筋膜・肛門挙筋・前仙骨筋膜
●腸腰筋
●横隔膜
●胸横筋
●頚長筋・頭長筋
●舌骨下筋・舌骨上筋
【姿勢・運動機能】
深前線は身体の支持に重要な働きをしています。
●内側縦足弓(つちふまず)を引き上げる
●下肢の各部分を安定化させる
●腰椎を前方から支える
●胸郭を安定させ、呼息と吸息を行わせる
●脆弱な頚部とその上にある重い頭部の両方のバランスを保つ
深前線における支持・バランス及び適度な緊張が無くなると、身体全体の短縮が起こり、
骨盤と脊柱の中心部の虚脱が促進され、代償的調整の基盤が作られます。
要するに、深前線の働きが低下すると、「代償動作」によって姿勢を維持しようとする働きが強くなるということです。
肩こりや腰痛などはいい例かと思います。
深前線そのものは運動に直接関与しません。
深前線の筋筋膜は、遅収縮性、持続性の筋線維を多く含んでいます。
そのため、深前線は中心軸構造に対して安定性と微妙な位置変化を与え、浅層の構造物と筋筋膜線維が容易にまた効率よく骨格と共同作用ができるようにしています。
ですので、
深前線の役割=インナーマッスルの役割
でイメージすると分かりやすいかと思います。
【ワンポイント】
腎経と腰痛は深い関係があると言われています。
深前線に属している”腸腰筋”も腰痛に関係する筋といわれています。
腰痛があって恐れが多い(「痛みに対して」や、「痛んでないけど痛むんじゃないかと思っている」など)人には腎経の問題を疑います。
その際にチェックするポイントは深前線でいう「内転筋-腸腰筋」になります。
腸腰筋は深層の筋なのでいきなり介入するのは控えるようにしています。
なので内転筋から介入します。
内転筋と関わる経絡は、「腎経」・「肝経」・「脾経」の3つあります。
走行的には、
ハムストと内転筋の筋間を「腎経」
薄筋上を走行するのが「肝経」
内側広筋と内転筋の筋間を「脾経」
このように走行しているイメージです。
なので腎経を意識して内転筋をリリースしていくときは、
内転筋とハムストの癒着を剥がすように意識して”遠位”から”近位”に向かって
アプローチしていきます。
腰痛がある方のほとんどは内転筋とハムスト間にしこりのような筋硬結があり、押すと結構な痛みが走ります。
ここをしっかりリリースできれば体幹前後屈どちらも動きが変わってきます。
深前線について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
④外側線と胆経
身体の側面を通る「外側線」と「胆経」
対象となる筋肉
●頭板状筋・胸鎖乳突筋
●外肋間筋・内肋間筋
●腹斜筋の外側部
●大殿筋・大腿筋膜張筋・中殿筋
●腸脛靭帯
●前腓骨頭靱帯
●長・短腓骨筋
【姿勢・運動機能】
外側線は姿勢では前後のバランスを取る役割があります。
また両足が働くと左右のバランスを取る作用があります。
運動機能としては、主に身体の側屈運動を起こすことに関与しています。
しかし、反対に体幹の横振りと回旋運動を調整する”ブレーキ”の機能”も同時に果たしています。
【ワンポイント】
外側線と胆経のラインは
よく坐骨神経痛のような症状を呈する人が痺れや痛みを訴えるラインでもあります。
以前リハビリのセミナーでは
「足関節の外反運動を行うことで中殿筋のエクササイズになる」
と言われていました。
実際に仰向けの状態で足関節の外反運動を誘導した際に中殿筋を触診しておくと
収縮は見られます。
これもアナトミートレインの理論とかぶりますね。
外側線について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
⑤肝経と脾経
※肝経や脾経も「深前線」と走行が似ており、関連性があるともいわれています。
上肢のライン
前面と後面のラインに分けて載せます。
上肢は上部の骨格から下垂しているため、
上肢それ自体は構造上の”柱”の部分にはなっていません。
①心経と小腸経・深後腕線・浅後腕線
【深後腕線】
対象となる筋肉
●菱形筋・肩甲挙筋
●回旋筋腱板(ローテーターカフ)
●上腕三頭筋
●尺骨の骨膜
●小指球筋
【浅後腕線】
対象となる筋肉
●僧帽筋
●三角筋
●外側上腕筋間中隔
●前腕伸筋群
【ワンポイント】
肩関節周囲炎の方などは、
可動域制限と共に肩の前面の強い痛みを訴えます。
トリガーポイントでは、肩前面の痛みは「斜角筋」や「棘下筋」がメインで挙げられます。
その肩前面の痛みや可動域制限に関与する棘下筋は深後腕線に属します。
アナトミートレイン的には、この場合、棘下筋が本当に影響しているのか確認するには小指球とか薬指や小指の爪の際あたりをじっくりもみほぐしていきます。
それで可動域制限が変われば棘下筋の影響を疑います。
肩の痛みが強すぎて触られるのを拒否される場合なんかは、
肩から離れた指だけを触るので相手からも嫌がられないため、ものすごく重宝します。
②肺経と大腸経・浅前腕線と深前腕線
【深前腕線】
対象となる筋肉
●小胸筋・鎖骨胸筋筋膜
●上腕二頭筋
●橈骨の骨膜
●外側手根側副靱帯
●母指球筋
【浅前腕線】
対象となる筋肉
●大胸筋・広背筋
●内側上腕筋間中隔
●前腕屈筋群
●手根管
【ワンポイント】
浅前腕線と深前腕線の区別の仕方は、
ベッドで仰向けになり腕をベッドから下して伸長位にさせます。
この時に、
●手掌面を上に向けた肢位 (浅前腕線)
●親指が天井を向いた肢位 (深前腕線)
の2種類で伸長感の違いを感じます。
これは問題のあるラインの特定や、実際のストレッチにそのまま活用できますので覚えておくと腕の治療の際役立ちます。
深前腕線をアプローチしていくことで、
頭部の前傾姿勢あるいは上位頸椎の過伸展の改善の手助けになります。
3.まとめ
今回は、アナトミートレインについて説明していきました。
全てではありませんが、経絡との関連性もなんとなく理解できたでしょうか、、、
途中でも述べましたが、
痛みによって患部を触るのを嫌がられる場合なんかは
評価を進めるのも気を使いますよね?
でもアナトミートレインの概念を理解して、それを使って評価すれば
患部を触ることで生じる無駄な筋緊張は最低限で押さえることができ、治療効果は高まります。
アナトミートレインだけの概念では、動きの評価や痛みから判断していきますが、
これに経絡の概念を合わせていくことで、
性格や感情も含めて評価できるようになるため、
評価しやすくなります。
アナトミートレインと経絡を組み合わせていくと治療の幅が広がってきますので、
おススメです!!
それでは、本日はこの辺で!
ありがとうございました!!
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