胸郭出口症候群に対する理学療法について~絞扼部位や姿勢との関係性~

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理学療法
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どうも。

KABOSUです。

 

今回は、前回の記事に続いて

胸郭出口症候群について

書いていきます。

 

前回は症例検討で胸郭出口症候群を呈した症例について実体験を記しました。

その記事はこちらからご覧ください。

胸郭出口症候群によって左手が動かなくなった症例

 

その中で、胸郭出口症候群について全体像がわかりにくかったと思いますので、一度、胸郭出口症候群についてまとめておきたいと思います。

 

●胸郭出口症候群について

●胸郭出口症候群の症状とは?

●胸郭出口症候群と姿勢の関係性

●胸郭出口症候群に対する理学療法

などをまとめていきたいと思います。

 

 

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1.胸郭出口症候群とは?

胸郭出口症候群は、頸部から上肢にかけて疼痛や痺れ、だるさといった上肢の症状や手指の血管運動障害などを呈する絞扼性神経障害です。

 

そして、絞扼部位によって、斜角筋症候群、肋鎖症候群、小胸筋症候群(過外転症候群)と呼ばれますが、総称して胸郭出口症候群と言います。

 

 

胸郭出口症候群で絞扼を受けるのは”腕神経叢”といって、第5頸神経~第1胸神経の前枝が、鎖骨下動脈とともに外下方へ向かって走行し、前・中斜角筋、第1肋骨で形成された”斜角筋隙”を通過します。

 

それぞれの神経は、鎖骨下に到達するまでに合流して神経幹となります。

 

この過程は様々なパターンが報告されており一定のパターンがないことが知られています。

が、しかし多くの文献からは、C5-6 が上神経幹、C7が中神経幹、C8-T1が下神経幹を形成し、第1肋骨と鎖骨で形成された”肋鎖間隙”を通過するとされています。

 

それぞれの神経幹は、鎖骨下を通過後、腋窩動脈との位置関係により神経束を形成します。

腋窩動脈の内側を通過する内側神経束、外側を通過する外側神経束、後方を通解する後神経束に分岐し、小胸筋、烏口鎖骨靱帯、胸壁で形成された”小胸筋下間隙”を通過します。

 

腕神経叢はこれら3つの絞扼部位を通過し、肩甲帯や上肢の運動と知覚を支配します。

 

これら絞扼部位を腕神経叢と血管が牽引や圧迫といった機械的刺激を受けることによって症状が出現します。

そのため、症状は背部や肩関節周囲だけでなく、前腕や手指に及びます

 

”斜角筋隙”・”肋鎖間隙”・”小胸筋下間隙”は軟部組織と骨組織によって形成された狭い間隙となっています。

 

腕神経叢は血管と共にこの狭い間隙を通過するためにこれらの組織によって圧迫を受けることで神経・血管症状を示します。

 

そのため、胸郭出口症候群には血管性胸郭出口症候群、神経性胸郭出口症候群、両者を合わせた混合性胸郭出口症候群の3つが存在します。

 

その中で、血管障害が主症状の血管性胸郭出口症候群を呈す例は少なく、約95%が腕神経叢の過敏状態を示す神経性胸郭出口症候群であると言われています。

 

胸郭出口症候群の治療のポイントは、絞扼部位とそこに加わる機械的刺激を見極め、問題となっている機能と姿勢・動作を改善することが重要になってきます。

 

 

2.胸郭出口症候群の症状

胸郭出口症候群の症状は以下に挙げます。

●上肢のしびれや肩や腕、肩甲骨周囲の痛み

※つり革につかまる時や、物干しの時のように腕を挙げる動作で生じる

●上肢の感覚障害

※前腕尺側と手の小指側に沿ってうずくような、ときには刺すような痛みと、しびれ感、ビリビリ感などの感覚障害が生じる

●手の握力低下

●細かい動作がしにくいなどの運動麻痺(巧緻動作障害)

※手指の運動障害や握力低下のある例では、手内筋の萎縮により手の甲の骨の間がへこみ、手のひらの小指球筋の萎縮が目立ってくる

●上肢の血行障害(手・腕は静脈血のもどりが悪くなり青紫色になる)

※鎖骨下動脈が圧迫されると、上肢の血行が悪くなって腕は白っぽくなり、痛みが生じる

 

 

3.胸郭出口症候群と姿勢の関係性

胸郭出口症候群の絞扼部位における力学的ストレスの種類から「牽引型」・「圧迫型」・「混合型」の3種類に分けられることが報告されています。

 

そしてそれぞれ姿勢から牽引型か圧迫型かをある程度判断できます。

 

●牽引型の胸郭出口症候群⇒痩せ型で”なで肩の女性”に多い

●圧迫型の胸郭出口症候群⇒筋肉質で”いかり肩の男性”に多い

 

上記のように、牽引型と圧迫型で姿勢との関わりがあるようですが、実際に「牽引型」・「圧迫型」・「混合型」の3つの型で発現する割合が高いのが「混合型」であるとされています。

 

その割合は、圧迫型で18.5%、牽引型で6.1%、混合型で75.4%とある文献では報告されています。

 

他の文献からは、胸郭出口症候群症例の病態としては「混合型」の割合が多いが、その症状は「牽引型」症状が多いとしています。

 

上記のことをまとめると、姿勢との関係性はあっても、それだけで判断することは信憑性に欠けるということになりますね。

 

 

4.胸郭出口症候群に対する理学療法

ここからは胸郭出口症候群に対する理学療法アプローチをまとめていきます。

姿勢に対する考え方と、絞扼部位に対する考え方で分けて説明していきます。

絞扼部位に対する理学療法アプローチ

胸郭出口症候群の絞扼部位は3つあったと思います。

●斜角筋隙

●肋鎖間隙

●小胸筋下間隙

この3つでしたね。

 

斜角筋隙での斜角筋の過緊張に対して

アプローチとしては、「斜角筋のリラクセーション」となります。

 

斜角筋の収縮により同側への頸部側屈が起こります。

 

そして、斜角筋は呼吸補助筋であり、斜角筋の収縮で第一肋骨を引き上げる作用があります。

 

このことから、斜角筋をストレッチするには、以下の動きを誘導していきます。

 

頸部を反対側へ側屈させた状態でゆっくり深呼吸させ、呼気時に第一肋骨を徒手にて下制方向へ誘導していく

 

これで斜角筋のストレッチが行えます。

 

この時、患者は背臥位にさせリラックスさせます。セラピストは患者の頭側から第一肋骨の下制を誘導します。(第一肋骨というより肩を下制させるイメージで)

※呼吸に合わせて数回行っていきます。

図:斜角筋

 

肋鎖間隙での絞扼に対して

肋鎖間隙に関しては鎖骨のアライメント修正が重要になります。

 

特に胸鎖関節の可動性低下が生じていることが多く鎖骨挙上時の肋鎖靱帯、鎖骨下筋のストレッチが大事になってきます。

図:鎖骨下筋

3D解剖学より引用

 

小胸筋下間隙での絞扼に対して

ここでは小胸筋のリラクセーションが重要になります。

 

大胸筋の外側縁から指を滑り込ませていくことで小胸筋にコンタクトできます。

 

大胸筋の筋腹が厚いため触り分けが難しい場合は、大胸筋と肋骨の間でどちらかというと、肋骨側を指で這わしていくと小胸筋にコンタクトしやすくなります。

 

小胸筋は収縮すると、筋腹の中央に集まるように筋が集まってくるため、リラクセーションするときは、小胸筋を中央から両端に引き離すようにリラクセーションしていきます。

図:小胸筋

3D解剖学より引用

 

姿勢に対する理学療法アプローチ

姿勢に対するアプローチに関しては、”なで肩”に対するアプローチが重要になります。

 

なで肩になると、肩甲骨は外転・下方回旋・前傾位を呈し、それと共に鎖骨の下制、頭部前方位、頸部屈曲、胸椎屈曲位となり、上位肋骨も下制します。

 

つまり、「顎が出て、猫背になり肩は巻き肩になる」ということです。

 

 

このような姿勢が続くと、頸部から胸郭周辺の筋の不均衡が生じるようになります。

 

これを上位交差性症候群といいます。

 

上位交差性症候群について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

肩甲骨の内側の痛みには”上位交差性症候群”に対するリハビリが有効

 

図:上位交差性症候群を呈した方の姿勢

エビデンスに基づく疾患別クリニカルマッサージ 評価と治療より引用

 

要するに、上位交差性症候群に対する理学療法アプローチとなで肩に対する理学療法アプローチは同様のものになるわけですね。

 

この筋のアンバランスを改善させていくことで自然と胸郭出口症候群の症状も軽減する可能性があるということです。

 

具体的なトレーニング方法はこちらの記事をご覧ください。

猫背を改善するために6つのトレーニングを実践しよう

 

こちらは猫背の改善方法ではありますが、猫背も同様に上位交差性症候群を呈した状態であるわけなので、アプローチ内容は大きく相違はありません。

 

 

5.まとめ

今回は、前回の「胸郭出口症候群によって左手が動かなくなった症例」の続きで、胸郭出口症候群についてまとめていきました。

今回の記事を読んでいただくと症例提示した方の症状や姿勢も同様のパターンを示していたことがわかります。

臨床症状をしっかりとらえていくことも大事ですが、こうやって疾患一つ一つの特徴やパターンもしっかり理解できているとより一層リハビリが楽しくなってきますね。

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました!!

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