「・・・あいたたたた・・・腰がッ!」
という症状や、
「なんでこの腰の痛みは消えんのや・・・重だるいわ・・・」
なんて症状を抱えている方は思っているよりも多く存在するものと思われます。
また、セラピストの臨床場面でも多く遭遇する症状の一つではないかと思います。
こんな症状の原因の一つに「腸腰筋」のトリガーポイントが挙げられます。
このように今回紹介する腸腰筋は、腰椎から小転子まで走行する「大腰筋」と腸骨から小転子まで走行する「腸骨筋」の2つの筋を合わせて「腸腰筋」と呼んでいます。
その内、大腰筋は腹筋と腸の後ろに埋まった状態で存在しています。
そして、腸骨筋は腸骨から始まり、腸骨の曲線に沿って走行し、大腰筋と並行して小転子に向かいます。
そんな大腰筋と腸骨筋ですが、トリガーポイントによる症状は多岐に渡ります。
中でも腰痛との関連が強く、中々治らない腰痛は実は大腰筋や腸骨筋に原因があったなんて話は思っているよりも多いです。
今回はそんな腸腰筋のトリガーポイントについてまとめていきたいと思います。
1.腸腰筋の解剖や機能について
大腰筋は最下位の胸椎から始まり、骨盤まで継続し、椎骨椎体の側面に付着します。
図:腸骨筋と大腰筋について(腸腰筋)
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より一部改変し引用
大腰筋は鼠径部で腸骨筋と合流し、下降して大腿骨の小転子に付着します。
腸骨筋の上部付着部は腸骨の内縁に位置し、同じく小転子まで走行します。
大腰筋の主な作用は、股関節を屈曲させることになります。
歩行やランニングの際に腹部まで大腿を持ち上げたり、背臥位から座位に身体を持ち上げるために大きな役割を果たします。
他にも、腰椎の安定化にも寄与しており、多裂筋や腰方形筋と共に腰椎の支持機構の役割を担っています。
大腰筋のトリガーポイントは、腰部痛と鼠径部痛に共通する原因であるほか、婦人科系の症状にも関連するなど症状は多岐に渡ります。
2.腸腰筋のトリガーポイントにより起こり得る「症状」
ここからはトリガーポイントについてです。
腸腰筋のトリガーポイントにより起こり得る症状についてですが、”痛み”以外にも症状は多岐に渡ります。
腰部痛
大腰筋のトリガーポイントは、身体の対応する側の腰部に関連痛を送ります。
トリガーポイントが非常に後部にある場合、背部痛は肩甲骨下部領域から殿部上部まで広がるとされており、腰痛以外にも脊椎全体に痛みを送ります。
痛みがひどいと腹筋運動が出来なくなり、椅子から立ち上がることも難しくなります。
さらに、大腰筋の症状が悪化すると、歩行自体が全くできなくなってきます。
図:腸腰筋のトリガーポイントと背部痛の関係性
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より一部改変し引用
鼠径部痛
また、腸骨筋におけるトリガーポイントは、大腰筋と同様の関連通パターンを背部に送ります。
下部付着部にあるトリガーポイントは、大腿の上部、鼠径部に痛みを送り、鼠径部痛として歩行時などに症状を引き起こします。
図:腸腰筋のトリガーポイントと鼠径部痛の関係性
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より一部改変し引用
腰椎前弯症の原因となる
大腰筋がトリガーポイントの存在により機能しないと、骨盤を前方に傾けて腰の前弯を過剰にします。
大腰筋は一側の筋がトリガーポイントの影響を受けている場合、椎体をその側に引く傾向があり、脊柱前弯症の原因である可能性が高くなります。
椎間板性の疼痛の原因ともなり得る
背骨における大腰筋トリガーポイントの影響は非常に重篤です。
短縮した大腰筋は、腰椎椎間板に持続的に圧を与えるため、椎間板症状の原因になる可能性があります。
前傾姿勢または習慣的に寄りかかる姿勢は、大腰筋トリガーポイントの兆候になります。
また、腸腰筋のトリガーポイントは、足を引きずったり、偏平足で歩く原因にもなってきます。
朝の股関節前面(鼠径部)のこわばり感
朝に股関節か鼠径部にこわばり感や腰痛があり、まっすぐに立てない場合、大腰筋にトリガーポイントを見つかる可能性が高いです。
片側の股関節が前に位置しているように見える場合、腸骨筋にトリガーポイントが形成されている可能性が高いです。
脚を後方へ伸展するには、大腰筋を身長する必要があり、これが大腰筋にトリガーポイントがある場合に、歩行を難しくする理由となります。
また、大腰筋の収縮は脚を外旋させるため、大腰筋が緊張しているときは脚が外方に向いた状態で歩行することになります。(これは大殿筋にも言えることであるため鑑別が必要になります・・・)
3.腸腰筋のトリガーポイントが形成される「原因」
次は腸腰筋のトリガーポイントが形成される原因についてです。
激しい運動
大腰筋は、激しいランニング、クライミング、または他の運動で大腰筋中央部を酷使した場合、過負荷になり機能が低下します。
腹筋運動、レッグアップまたは他の腹筋エクササイズは、トリガーポイントによる障害が増悪します。
一方では、トリガーポイントがない状態を保つことが出来れば、腹筋運動は大腰筋と腹筋療法にとって有益となります。
長時間の座位保持
長時間の座位、特に膝が上がっている状態の座位は、大腰筋を短縮するため、大腰筋に悪い影響を与えます。
これは車の座席シートや車いすの座面など安定性を考慮しすぎた結果、生まれた問題となります。
このことから、長時間の車移動は腸腰筋のトリガーポイント形成を促進する可能性が高いということになります。
臨床の場面では、車いすに長時間座らされている患者さんは腸腰筋が短縮しきってしまい、トリガーポイント云々よりも、そもそも機能的に歩行することも出来なくなる可能性があるということになります。
習慣的な異常姿勢(猫背や前傾姿勢)
習慣的な前傾、寄りかかり、または猫背姿勢の場合、大腰筋を含む筋は、身体が倒れないように常に収縮していなければなりません。
緊張した大腰筋により生じるゆがんだ姿勢は、頸部と背部の筋を酷使する傾向があり、頭を上げて眼を平行に保つため常に緊張を強いられます。
このように酷使された筋には、必ずトリガーポイントが生じます。
その筋が別の筋にもトリガーポイントを生じさせるため、連鎖反応的に身体の至る所にトリガーポイントが生じる結果となります。
4.まとめ
今回は腸腰筋のトリガーポイントについてまとめていきました。
腸腰筋と言えば、小転子に付着するため、股関節への影響を第一に考えがちですが、腰椎への付着があることから腰痛との関わりも非常に大きいものになります。
現代の生活では腸腰筋の中でも大腰筋を使わない習慣となりやすく、結果として姿勢異常や腰痛の誘発といった負の連鎖を生じやすくなります。
この背景にはネットワークの普及や公共交通機関の発達など身近な事柄の影響が非常に強く作用しています。
この流れは簡単に変えれるものではなく、今後も腰痛を訴える方は増えてくるものと思われます。
そんな時、腰痛の原因と対処法を誰でもある程度分かっていると、重症化する前に予防できる可能性が増えてくるわけです。
そんなわけで今回はこのような記事を紹介していきました。
腸腰筋のエクササイズについてはこちらの記事をご覧ください。
まずは腰痛の原因の認知が重要になると思います。
それでは本日はこの辺で!
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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