どうも。
KABOSUです。
今回は
腰痛について
まとめていきます。
腰痛を改善するためには何が最も効果的か?
・ストレッチなのか?
・筋力トレーニングなのか?
・マッサージか?
・関節系へのアプローチか?
・出来る範囲で活動性を維持するのがいいか?
・ただただ安静をとるのがいいのか?
などなど・・・検討材料は多々あります。
セラピストの方は、患者の状態などを見て治療内容を判断しているものを思われますが、
今回はそんな腰痛患者には
「腰痛にはインナーマッスルトレーニングが必須であり、特に”多裂筋”に対するトレーニングは重要になる」
ということを文献を交えて記事にまとめていきたいと思います。
1.多裂筋とは?
まず簡単に多裂筋の説明をします。
図:多裂筋
3D解剖学より引用
●多裂筋は頸部から腰部まで存在する筋である
●多裂筋は基本的に”単関節筋”であり「姿勢保持筋」として機能する
●多裂筋の作用としては体幹の伸展作用があるが、主に脊柱の安定化に関与している(インナーマッスルとして機能している)
多裂筋についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
ついでに多裂筋のトレーニング方法や、今回説明する多裂筋を鍛えなければならない理由についても少し触れています。
2.腰痛には筋力トレーニングが必須である理由
ここからは、腰痛に対してなぜ多裂筋のトレーニングが必須になるのか?
を文献から得られる情報と合わせてまとめていきます。
腰痛により多裂筋は萎縮する、その萎縮は腰痛改善後も続く
まずは多裂筋と腰痛の関係性についてです。
急性腰痛のほとんどは通常、”自然に緩解を迎える”といわれています。しかし同時に”再発率も高い”と言われています。
この腰痛の再発率を軽減させるため、腰痛後の多裂筋の断面積を評価し、腰痛に関連のある
インナーマッスルがどのように変化していくのかを以下の研究では評価しています。
Multifidus muscle recovery is not automatic after resolution of acute, first-episode low back pain.
この研究では「多裂筋の萎縮は腰痛が改善した後も進行する」という結果が出ています。
対象
多裂筋の部分的抑制を有する39人の患者で行われ、患者を無作為に対照群または治療群に割り当てています。
方法
①治療のみを受ける群と、②治療と特定の局所的な運動療法を受ける群の2つのグループに分け評価しています。
両群の結果の測定には、多裂筋の断面積の大きさ・疼痛・身体障害・可動域の項目で
評価され、10週間の追跡調査で再評価されました。
結果
疼痛・身体障碍・可動域は両群ともに大きな変化はなく、症状の寛解を迎えました。
しかし、多裂筋の断面積の大きさのみ局所的な運動を入れない群で10週間後も依然として
多裂筋の大きさが減少していたという結果が出ています。
結論
●急性腰痛は自然寛解を迎えるものである
●腰痛の発生により、多裂筋の萎縮が始まる
●痛みは時間がたつにつれて軽減するが、多裂筋の筋委縮は進行する
●腰痛患者に対して、局所的なトレーニングを行うことで筋の回復を促せる
多裂筋の回復は、痛みを伴う症状の寛解時に自然に起こるものではありません。
つまり腰痛が収まったからといって何もしなければ腰痛再発の可能性が示唆されるということです。
「ぎっくり腰になったらクセになる」
など言われますが原因はこの辺にあるのかと思われます。
腰痛の再発を防ぐには多裂筋のトレーニングは欠かせないことがこの研究でわかります。
多裂筋への介入は腰痛の再発率を軽減させる
次も多裂筋と腰痛の関連性についての研究です。
Long-term effects of specific stabilizing exercises for first-episode low back pain.
この研究では、急性腰痛および初回の腰痛患者に対して特定の運動介入により腰痛の再発率にどう影響するかを評価しています。
対象
腰痛歴のない急性腰痛患者39人を医学的に管理し、無作為に対象群と特定の運動群に割り当ています。
方法
無作為に選定した対象群と特定の運動群の2つの群に対して、それぞれ介入し、治療の1年後と3年後に、電話による質問票を患者と一緒に実施しています。
※医学的管理については”アドバイス”と”薬の使用”が含まれている
※特定の運動については、腹横筋と収縮して多裂筋を修復することを目的とした運動を実施
結果
質問票の結果から、特定の運動群の患者は、対照群の患者よりも少ない腰痛再発しか経験していないことが明らかになりました。
治療の1年後:特定の運動群の再発は30%、対照群の再発は84%
治療の2〜3年後:特定の運動群の再発は35%、対照群の再発は75%
結論
●腰痛は自然に緩解する
●多裂筋は腰痛寛解後も自然に回復しない
●多裂筋・腹横筋のトレーニングを合わせて治療することは腰痛の再発率を軽減させる1つのポイントとなる
多裂筋を含むインナーマッスルのトレーニングを行うことで、腰痛の再発率は
インナーマッスルトレーニングを行わない群に比べ大きく減少しています。
このことから、多裂筋を含むインナーマッスルトレーニングは腰痛の再発率軽減に一役を買うことが予想されます。
腰痛が治ったからといって、腰部に対して何も対処しないのは「再び病院に戻っておいで」と言っているようなものなのかもしれませんね。
不安定性のある患者は本来の多裂筋の役割を果たせない
こんな情報もあります。
この研究では、上肢の運動に先立って体幹筋がどのように働くかを評価しています。
本来は、インナーマッスルである体幹筋(多裂筋)が四肢の動きに先立って身体を安定させるために働きます。
それが腰痛患者ではどのように変化が出るかを見ています。
対象
対象は、慢性MLBP(機械的腰痛)患者(不安定性のある腰痛25人、不安定性のない腰痛18人)、および無症候性の対象者の39人となっています。
方法
具体的な方法は以下の通りです。
上肢の運動で”三角筋(Deltoid)”の筋活動を評価
そして、腹直筋(RA)、腹横筋(TrA)、内腹斜筋(IO)、外腹斜筋(EO)、多裂筋(LM)、脊柱起立筋(ES)の6つのそれぞれの筋活動が”三頭筋”の活動に対してどのタイミングで見られるかを評評価する
※この研究では腹横筋(TrA)と内腹斜筋(IO)はセットで評価しています。
絵:研究の方法
結果
図:結果
【備考】
赤ライン:三頭筋が働いたタイミング
Control:調整群
Instability MLBP:不安定性のある機械的腰痛
Noninstability MLBP:不安定性の内腰痛
この研究の結果ですが、上記の図をご参照ください。
【コントロール群】
予想通り多裂筋は三頭筋の活動の前に筋活動が確認されています。
【不安定性のある腰痛患者】
三頭筋の活動に先立って活動する筋が一つもありません。
身体を安定する筋がないので、動作も不安定になると思われます。
【不安定のない腰痛患者】
不安定がなければ多裂筋は体幹筋の役割を果たせていることがわかります。
ただ、今回の話とは関係ないですが、腹直筋の活動がこの場合、かなり筋活動が遅れていることが気になりますね。
【結果から得られる情報】
多裂筋は、不安定性のある腰痛の場合、本来の機能を果たせていない可能性がある
結論
●健常者では、運動に先立って多裂筋などインナーの活動が見られる
●腰痛の中でも、”不安定性がある、なし”で多裂筋の活動に差が出る
●不安定性のある腰痛の場合は、多裂筋が上手く機能していない可能性がある
●不安定性のある腰痛の場合、多裂筋などの収縮パターンの再学習を行っていく必要がある
以上の点が挙げられます。
運動に先立って、インナーマッスルが働くことは確定事項であるため、やはり多裂筋などの
個別的なトレーニングとインナーマッスル全体の共同収縮は重要になるということですね。
3.まとめ
今回は、多裂筋を含むインナーマッスルトレーニングが腰痛にどう影響するのか?、腰痛があるとインナーマッスルの働きはどうなるのか?というテーマで文献を交えながらまとめていきました。
結果的には、腰痛にはインナーマッスルトレーニングは必要であるということがわかりました。
そして、不安定性のある腰痛の場合は、インナーマッスルが本来の機能を果たせていない可能性があることもわかりました。
それを踏まえて、今後は腰痛患者への介入を試みていきたいと思います。
それでは本日はこの辺で!
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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