どうも。
今回もトリガーポイントシリーズで、「棘上筋」について紹介していきます。
棘上筋は片のインナーマッスルとして機能しており、肩の安定化に寄与しています。
肩の疾患で多い「腱板断裂」では棘上筋の断裂が高頻度に起こり、肩の可動域制限や痛みを引き起こします。
この棘上筋にトリガーポイントが形成されることで、肩外側の痛みや肘まで痛みが波及します。
また肩の安定化に寄与する筋であることから、トリガーポイントが形成され筋機能不全を引き起こすことで肩関節部分の轢音の原因になることもあります。
「肩がしっかりはまっていない感じ」などの訴えがある場合、棘上筋にトリガーポイントが形成されている可能性があります。
今回はこの棘上筋についてまとめていきます。
以前の記事でも棘上筋のトリガーポイントに触れています。
良ければこちらもどうぞ!
1.棘上筋について
棘上筋は肩甲骨の棘上窩に位置します。
肩峰の下を外方へ走り、上腕骨に付着しています。
それによって、テコの原理を用い上腕を持ち上げ、また他の回旋筋と共に、関節を結合しています。
図:棘上筋の解剖について
回旋筋腱板(ローテーターカフ)
棘上筋は上腕骨を関節窩に引き寄せる働きがあると述べましたが、その機能は棘上筋だけでなく他に3つの筋が存在します。
それらを合わせて回旋筋腱板(ローテーターカフ)と呼びます。
●棘上筋
●棘下筋
●小円筋
●肩甲下筋
上記の4つから構成されます。
臨床の場面では、単に「腱板」と呼ばれることも多いです。
2.棘上筋にトリガーポイントが形成されることで起こり得る「症状」
棘上筋のトリガーポイントによる症状は大きく分けて4つに分けられます。
①肩周囲の痛み
②肩の可動域制限
③肩関節の適合性不良
④テニス肘との関連
図:棘上筋のトリガーポイントの部位と関連する症状
①肩周囲の痛み
棘上筋のトリガーポイントの痛みは、主として、肩外側の深部の痛みが挙げられます。
時には、上腕の外側から、前腕、手首へと痛みが広がることもあります。
上肢の可動に伴って働く筋であることから、腕を上げようとするだけでトリガーポイントが反応し、ひどい痛みが走ることがあります。
②肩の可動域制限
棘上筋にトリガーポイントが形成されていると、腕を頭上に上げるのはほとんど不可能に近い状態になります。
そうなると、洗髪動作などは困難を極めることになり、日常生活に支障をきたすことになります。
③肩関節の適合性不良
棘上筋のトリガーポイントは、肩関節部分の轢音の原因だといわれることもあり、その背景には棘上筋の筋機能低下が影響しているとされています。
棘上筋は肩甲上腕関節を求心位に保つ機能があるわけで、その機能がトリガーポイント形成により破綻することから、関節面の適合性が悪くなり轢音の出現に繋がるといったことになります。
一言に完結にいうと、
「棘上筋が緊張していると、上腕骨頭が関節窩内でスムーズに動くことを妨げる」
ということになります。
そのため、棘上筋にトリガーポイントが形成されていて轢音が出現している場合は、トリガーポイントが鎮静化することに合わせて、轢音も消失することになります。
④テニス肘との関連
棘上筋のトリガーポイントは、テニス肘と知られている肘外側への痛みを引き起こすこともあります。
テニス肘はよく関節炎や腱炎などの病名がつけられ、肘の問題として片付けられることがほとんどですが、実は筋膜のトリガーポイントによる関連痛が影響していることもあり、頭の片隅に入れておく必要があります。
3.棘上筋のトリガーポイントが形成される原因について
棘上筋は、上腕骨を求心位に保つ働きがあり、どちらかと言えば”縁の下の力持ち”的な役割となっています。
そのため、少しづつ疲労が溜まって気付いたらトリガーポイントが形成されていたなんてことが起こり得る筋の一つになります。
ちなみに、棘上筋のトリガーポイントは、腕を過度に使う動作や活動で形成されやすくなります。
①重いものを持つなど重労働
棘上筋は通常、重いものを運ぶなど、一度の重労働によって負荷がかかります。
特に、腕をまっすぐに下ろして重い荷物などを運ぶ際には、肩関節が外れないようにするために棘上筋は常に緊張を維持しなければならず、極度の疲労を強いられることになります。
②デスクワーク
”腕を長時間頭上に上げる仕事”や、”肘を支えずにコンピューターのキーボードを叩き続ける作業”も棘上筋を疲弊させます。
③転倒などの強い衝撃
転倒によっても棘上筋のトリガーポイントは活性化します。
転倒により骨折などがなくて安心していて、少し経った後から腕が挙がらなくなったとか、肩の外側部が痛くなったなどの症状がある場合は、棘上筋のトリガーポイントが形成されている可能性が考えられます。
4.棘上筋のトリガーポイントに対する治療の方法
棘上筋は肩甲骨の上、肩の上部を覆う厚い僧帽筋のすぐ下にあります。
そのため、軽い刺激では表層にある僧帽筋への刺激しか入らず、棘上筋のトリガーポイントに対する治療が完遂できていないことになります。
棘上筋のトリガーポイントは2か所に形成されます。
1つは肩甲骨上角のすぐ下の筋腹中にあり、もう1つは、3~5㎝外側で、筋が肩峰の下に入り込む付近にあります。
肩峰の下のトリガーポイントに関しては、中々触れにくい部位になりますが、肩甲棘と肩峰の間から指を沈み込ませて上腕骨の方に向かって沈み込ませた指を曲げる(DIP関節を屈曲させる)とより深部に効いてきます。
指がきつい場合は、ある程度深く進入したところで、反対の手を使って患者の肩甲骨を挙上・下制させることで勝手に棘上筋に刺激が入ってきます。
図:棘上筋のトリガーポイントの部位
5.まとめ
今回は棘上筋のトリガーポイントについてまとめていきました。
これまでもいくつかトリガーポイントについて紹介してきましたが、
「こんなに小さい筋肉なのに結構いろんな症状を引き起こすんだな・・・」
といった驚きが多いのがトリガーポイントの世界です。
今回紹介した棘上筋のトリガーポイントに関しても、肩だけでなく肘まで痛みを波及させたりします。
あくまでトリガーポイントがすべてではないと理解しつつも、可能性としてトリガーポイントに関する知識を持っておくと、評価の幅・治療の幅は広がってくると思います。
というわけで、今回は棘上筋のトリガーポイントについてでした!
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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