胸郭出口症候群の場合、第一肋骨を下げるアプローチが有効である可能性がある

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胸郭出口症候群の場合、呼吸が浅くなり、肋骨が引きあがっていることがあります。

このタイプを圧迫型の胸郭出口症候群と言います。

逆になで肩により、胸郭出口症候群が引き起こされてる場合は、上記のような現象は起こりません。

このタイプは牽引型の胸郭出口症候群と言います。

以前の記事でも紹介しましたが、胸郭出口症候群のタイプは3種類(圧迫型・牽引型・混合型)に分けられ、混合型が大半を占めるといわれています。

今回は、前回の「胸郭出口症候群によって左手が動かなくなった症例」の続きで、胸郭出口症候群についてまとめていきます。胸郭出口症候群について・胸郭出口症候群の症状とは?・胸郭出口症候群と姿勢の関係性・胸郭出口症候群に対する理学療法などをまとめていきたいと思います。

今回は、そんな胸郭出口症候群の”圧迫型タイプ”に対するアプローチの一例をご紹介します。

1.まずは胸郭出口症候群の理解を進める

胸郭出口症候群の圧迫型の場合、基本的には”いかり肩”のような姿勢を取っていることが原因の一つになり得ます。

●牽引型の胸郭出口症候群⇒痩せ型で”なで肩の女性”に多い

●圧迫型の胸郭出口症候群⇒筋肉質で”いかり肩の男性”に多い

このように、簡単にタイプごとに姿勢を関連付けるとイメージしやすくなりますね。

ちなみに胸郭出口症候群の絞扼部位は以下の図の通りです。

図:胸郭出口症候群の絞扼部位

胸郭出口症候群の圧迫型の場合のアライメントとは?

圧迫型となると、肩だけでなく胸郭全体が挙上している状態になります。

つまり肩をすくめているような姿勢ですね。

このような姿勢は前回の記事でも紹介しました。

肩こりや精神的な緊張を常に感じている場合、多くは「肩をすくめている状態」になっています。こんな時は、肩だけでなく、肋骨を含む胸郭に対しても影響を及ぼすということになります。胸郭に影響が生じるということは、「呼吸」にも当然影響してくるということになり、短絡的な問題ではなく、肩をすくめているだけのはずが、身体全体の問題として影響してくることが予想されるわけです。

このような姿勢になると常に肩回りの筋群は過緊張状態となり、慢性的な肩こりと共に上肢のシビレや脱力が引き起こされる可能性が出てきます。

この圧迫型の場合、一つのポイントになる部分があります。

それは「第一肋骨」になります。

肋骨は12本あり、それが両側に存在するため合計24本になります。

この肋骨が鳥かごのようになり”胸郭”を形成します。そして、その中に心臓や肺が存在します。

呼吸によってこの肋骨の集合体である胸郭が動きます。

上位肋骨は前後方向へ動くことからポンプハンドル運動

下位肋骨は左右方向へ動くことからバケツハンドル運動

このように2パターンの動きを認めます。

若干話が逸れましたが、この胸郭の中の”第一肋骨”が重要なポイントになります。

ポイントになる要点は以下の通りです。

●第一肋骨に斜角筋の付着があること

●第一肋骨は鎖骨よりも上方に位置していること

●第一肋骨を含めた胸郭は呼吸との関わりが深い事

などが挙げられます。

補足:第一肋骨の解剖と第一肋骨の挙上により引き起こされる可能性のある問題

図:第一肋骨の解剖について

【第一肋骨の解剖】

●胸骨から出た第一肋骨は鎖骨の後面を上方に上っていき、第一胸椎に接合する

●鎖骨よりも位置関係としては上方に位置する

●斜角筋の付着を持つ

【第一肋骨はなぜ挙上してしまうのか?】

原因は、呼吸パターンが大きく関わっているものと思われます。

「斜角筋が引き上げているのでは?」

とも思えますが、斜角筋自体そこまでのパワーはないでしょうから、どちらかというと呼吸パターンの不良により第一肋骨が引き上がり、斜角筋も同時に緊張するために、第一肋骨の挙上と斜角筋の短縮がセットで生じるものと思われます。

【第一肋骨の挙上により生じる可能性のある問題】

第一肋骨の慢性的な挙上により、肋鎖間隙の狭小化や斜角筋の短縮が生じる可能性が出てきます。

本来あるスペースを第一肋骨の挙上により潰してしまう可能性があるからです。

以上のことから、胸郭出口症候群の圧迫型の場合は「第一肋骨の挙上」についてしっかり評価することが大事になってきます。

2.胸郭出口症候群に対して第一肋骨の挙上改善へのアプローチ方法

ここまでで、胸郭出口症候群に対する第一肋骨の挙上へのアプローチの必要性はある程度理解できたかと思われます。

ここからは実際に第一肋骨の挙上に対してのアプローチ方法をご紹介します。

①第一肋骨を直接下げるアプローチ

今回お伝えしたい内容の7割くらいはココになります。

図:第一肋骨の挙上を改善させるアプローチの一例

上図のようにアプローチすることで第一肋骨の挙上を改善させることが可能になります。

当然、一時的な解消になるため、併せて呼吸パターンの改善や呼吸の仕方についても指導していきます。

第一肋骨の挙上は思っているよりも多くの人に起こっている問題です。

対象者の頭側に立ち、頸部をどちらかに側屈回旋させ、対側の第一肋骨にコンタクトしてみるとよくわかります。

※頸部の右側屈回旋させた場合、左側の第一肋骨をコンタクトします

※第一肋骨は思っているよりも脊椎寄りに存在し、鎖骨よりも上方に位置します

第一肋骨にコンタクトした状態で、対象者に深呼吸してもらいます。

そのときに第一肋骨の挙上を認める側では異常に第一肋骨の挙上を感じられるはずです。

そしてこの第一肋骨の挙上は意外と左右差があることが多いです。

これがわかると、あとは「第一肋骨の下制を促していくだけ」です。

しかし、無理に押すと非常に痛いです。

●ある程度の圧を掛けた状態で、対象者にゆっくり深呼吸をしてもらう

●その間、第一肋骨の挙上を常に止めておくようする

●そうすることで徐々に第一肋骨が引き下がってくる

※呼気に合わせて下方に押せるようになる

このように、意識しながら第一肋骨のの下制を促していきます。

対象者の呼吸を利用していくため、思っているよりも静的なアプローチになります。

これは対象者自身も実感するようで、下制する感じをお互いに共有するようにすると効果が高まります。

②下位肋骨を意識した呼吸指導

下位肋骨を意識した呼吸、つまり先述したバケツハンドル運動を意識した呼吸法になります。

これはピラティスなどでよく活用されている呼吸法であり、胸式ラテラル呼吸というようです。

以下に簡単に紹介しています。

今回はこの続きで、「自律神経系の異常に対して行う運動」についてまとめていきます。自律神経の問題に対する改善方法は様々ありますが、やはり前回の記事でも紹介したように、胸郭の可動性は著しく低下します。そのため、胸郭に対して、どんな運動が有効かを説明&紹介していきたいと思います。

結局のところ、浅い呼吸で上位肋骨を慢性的に使ってしまっているため、意識を変える目的で下位肋骨を使った呼吸を行ってもらうというイメージで指導していきます。

腹式呼吸でも構いませんが、この場合、結局上手くできず上位肋骨の挙上(第一肋骨の挙上)が生じてしまう率が高くなるため、下位肋骨を動かすよう(普段意識しないところを意識させていく)にする方が効率的です。

③斜角筋の緊張が入らない状態での深呼吸を再学習させる

最終的には、頸部の筋(特に斜角筋)を触察した状態で深呼吸をしてもらい、筋の緊張が入っていないかをチェックしていきます。

いくら第一肋骨の下制が起こっても、結局呼吸パターンが変わらなければすぐに元に戻ってしまいます。

第一肋骨を挙上させた状態での呼吸が当たり前と思っているわけですから・・・

そのため新たな呼吸パターンを指導して完全に変えなくても「こういった方法で呼吸するのか」とか「こうすると楽に呼吸が出来る・深く呼吸が出来る」などの良い反応を感じてもらうようにします。

そうすることで、日常生活でもふとした時に思い返して呼吸パターンを修正するよう働きかけが起こるようになります。

3.まとめ

今回は前回の記事からの続きで、肩をすくめている状態と胸郭出口症候群との関連性などについてや、そこに関連する「第一肋骨の挙上」について考えていきました。

第一肋骨の挙上は胸郭出口症候群に限らず、多くの健常人でも生じている問題です。

慢性的な肩こりの方なんかは高確率で第一肋骨の挙上を認めます。

この第一肋骨の挙上に対するアプローチの一例を簡単に紹介していきましたが、刺激量さえ注意すれば比較的即効性の高いアプローチの一つになります。

重要なのはそのあとの呼吸パターンの改善になります。

そこが上手くケアできなければいつまでも第一肋骨の挙上は改善されないと思われるため、注意してみていきたいですね。

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!