どうも。
KABOSUです。
今回は、少し専門的な話です。
慢性腰痛の場合、局所だけでなく全身的に評価していくものだと思います。
そして、原因のはっきりわからない腰痛および下肢痛がある場合、「仙腸関節の問題」を頭の片隅に思い浮かべるのではないでしょうか。
実際の所、仙腸関節性の問題は多くの腰痛と関わっていることが知られています。
では、一体仙腸関節がどのように腰痛と関わっているのか?、仙腸関節がどのような状態にある時に腰痛として症状を引き起こしてしまうのか?
今回はその点に関してまとめていきたいと思います。
1.仙腸関節と腰痛の関係性
まずは、仙腸関節がどのように腰痛と関係しているのかについて進めていきましょう。
仙腸関節の特徴
●生まれたときはフラットな関節(生活により不規則に変化する)⇒安定した関節となる
年齢と共に変化します。
このことは後述します。
●仙腸関節の機能は可動性より荷重支持
可動性はあっても数ミリ程度です。
荷重伝達の機能が正常に働くためには仙腸関節の機能は非常に重要です。
●運動感覚に乏しく、疼痛に敏感(侵害受容器が多い)⇒痛みを感じやすい
仙腸関節を個別で動かせる人はほとんどいません。(運動感覚-)
しかし痛みは非常に感じやすい部分です。
【仙腸関節の支配神経】
・前方:L5・S1神経の前枝
・下方:上殿神経,S2神経の後枝(外側枝)
・後方:L5・S1神経の後枝(外側枝)
※中殿筋(上殿神経)と仙腸関節の関係性は大きい
※上殿神経はL4~S1から起こっているため
仙腸関節は”不動の関節”である
上記でも述べましたが、仙腸関節の関節面はもともとフラットであり可動性のある関節として存在します。
それが成長と共に、凹凸のある関節面となり年齢と共に安定性の高い関節に変化してきます。
【仙腸関節の自然経過】
・10歳台では関節面は平らであるため、すべての方向に動きが起こるが、20歳代では腸骨側で凸となり、仙骨側で凹となる。
・40歳代になると凹凸の関係が著名となり、60歳代では関節間に結合組織が出現する。
・さらに、年齢が進むにつれ関節間に骨性癒合が生じるため、可動域制限が生じるようになる。
・骨性癒合は60歳代では約80%、70歳代では80%、80歳代では100%とも報告されている。
このように年齢と共に不動の関節へと変化していくようです。
このことから10歳代~20歳代の生活スタイルによっては仙腸関節性の腰痛に影響を及ぼしそうですね。
●いつも足を組んでしまう。しかも同じ足を組む。
●いつも片足に体重をかけて立ってしまう(左右均等の直立で立ってない)
などの習慣を若い頃から持っている人は仙腸関節の問題を抱えている可能性があるということになります。
仙腸関節は不安定になることで腰痛になる?
上記の内容を考えていくと、仙腸関節は年齢と共に関節的には安定性の高い関節に変化していくことがわかります。
そんな関節が不安定になって、それが腰痛の原因になるのか?
と疑問に思うこともしばしば・・・
ここに関しては後述する内容になりますが、
「閉鎖力 Force closure」
という機能が、この仙腸関節の不安定性を生じさせ、結果的に腰痛といった症状を引き起こすことになります。
つまり、
「構造的には安定していても、機能的に不安定性を生じさせている状態が腰痛の原因になる」
ということになります。
※構造的⇒動作は関係なく、その場で安定が得られている状態
※機能的⇒人が動くときに常に安定性を維持できること
2.仙腸関節には機能的な安定が必要
仙腸関節の構造的な安定と機能的な安定について述べていきました。
実際に、どの組織・関節でもそうですが人は活動する生き物なので、構造的に安定しているのはもちろん、機能的にも安定していなければいけません。
この機能的な安定とは、
がっちり固まっていればいいというわけではなく、
「動く所はしっかり動いて、安定するところはしっかり安定する」
ということになります。
「不安定の中に安定がある」
といったイメージになります。
一つの例として「歩行時の仙腸関節の動き」を紹介します。
歩行時の仙腸関節の動き
図:歩行中、左下肢を振り出したときの腰椎・骨盤の動き
【左下肢を振り出した際の動き】
股関節
右:伸展
左:屈曲
寛骨
右:前方回旋
左:後方回旋
仙腸関節
右:counter nutation
左:nutation
仙骨・腰椎
両者とも“右回旋”が生じる
このような動きが見られます。
歩行時の動きをみると分かると思いますが、
歩行は交互に足を振り出すことで前進するわけなので、左右非対称の動きになります。
故に、仙腸関節の動きも左右非対称になるわけです。
つまり、仙腸関節の動きは二次元的な解釈ではなく、三次元的な理解をしていく必要があります。
実際には、動作時には回旋要素が含まれるため、中間にある仙骨は斜軸の動きをします。
当然、体幹の前後屈などの単一の動きでは仙腸関節および中間にある仙骨は前後の動きになります。
ニューテーション(nutation)・カウンターニューテーション(counter nutation)って何?
上記の歩行の一例で出てきた用語ですが、
寛骨から見た仙骨の動きのことを意味します。
図:仙骨の動き
●ニューテーション(nutation)
⇒仙骨のうなずき運動
●カウンターニューテーション(counter nutation)
⇒仙骨の起き上がり運動
「仙骨がうなずいている場合は、仙腸関節の安定性が高い状態(閉まっている状態)」
「仙骨が起き上がっている場合は、仙腸関節は不安定になっている状態(緩んでいる状態)」
仙骨の状態によって、仙腸関節の状態が理解できます。
ちなみに寛骨の動きから考えていくと、
「寛骨が前傾(骨盤の前傾)している場合は、仙腸関節の安定性が高い状態(閉まっている)」
「寛骨が後傾(骨盤の後傾)している場合は、仙腸関節の安定性が低い状態(緩んでいる)」
このようになります。
表現が2パターンあるため、理解に苦しむことがありますが、
正確な仙腸関節の動きを理解する場合、寛骨・仙骨のどちらの動きも理解する必要があります。
「仙骨のうなずき運動」が生じている状態が仙腸関節が安定しているといえる
関節の構造上、
仙骨がうなずいている状態を、仙腸関節の安定が得られていると判断します。
3.結局のところ、仙腸関節の安定とは?
ここまでは、仙腸関節とそれに関わる用語の理解についてまとめていきました。
ここからは、実際の「仙腸関節の安定とは?」について考えていきましょう。
仙腸関節の安定には2つの要素が関わっています。
一つは構造的な安定。
そしてもう一つは筋や靱帯の協調的な収縮による安定。
上記2つはそれぞれForm closure(閉鎖位)・Force closure(閉鎖力)と呼ばれています。
□構造的な安定=Form closure(閉鎖位)
□筋や靱帯の協調的な収縮による安定=Force closure(閉鎖力)
このForm closureとForce closureとの組み合わせにより、仙腸関節の理想的な動的安定性が得られます。
①骨関節の構造による仙腸関節の安定(閉鎖位 Form closure)
骨盤の骨構造は、非常に安定性の高い構造になっています。
図:Form closure
閉鎖位は関節面が接近し、安定した状態で、この状態を維持するのに余分な力は必要ありません。
仙腸関節の場合はうなずき運動が起こっている状態のことを言います。
②筋や靱帯による仙腸関節の制動(閉鎖力 Force closure)
骨盤の周囲の組織で骨盤を過剰運動から制御する働きがあります。
図:閉鎖力
こちらは、閉鎖力とは違って、その位置を保つために外力が必要不可欠になります。
仙腸関節では起き上がりの状態(仙骨が)になり、関節の適合静的に緩みの肢位に位置します。
この状態では大殿筋や胸腰筋膜の緊張が必要になります。
Form closureとForce closureとの組み合わせが仙腸関節の安定化に重要となる
上記のことから、
骨盤の構造的な安定性に加え、骨盤周囲の筋や靱帯による制動が組み合わさることで
仙腸関節の安定性が得られるということになってきます。
この両者がしっかり機能することで、
仙骨はうなずき運動が生じ、構造的にも機能的にも安定性の高い状態になるということですね。
4.まとめ
今回は仙腸関節の安定性ってなんだろうという疑問から記事を作っていきました。
実際、用語も多いし、仙腸関節の動き自体が複雑であるため、なんだかまとまりのない内容になってしまいました・・・
少し掻い摘んで仙腸関節の安定性を復習すると、
●仙骨はうなずいている状態が安定している
●仙腸関節は機能的な安定性を得るためには、骨構造(閉鎖位)だけでなく、周囲の筋や靱帯からの安定性(閉鎖力)も必要
●仙腸関節の動きは、解釈の際に、”仙骨からの動き”と”腸骨からの動き”があるため少しわかりにくいが、両者とも理解する必要がある(歩行など左右非対称の動きの際に重要になる)
などなど、要素で理解して頂ければと思います。
と、まぁ今回はこんな形で終わりにしたいと思います。
仙腸関節性の腰痛に対するアプローチ方法など知りたい方はこちらの記事に書いておりますのでご覧ください。
それでは本日はこの辺で!!
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