多裂筋トレーニングは腰痛に有効~体幹伸展時の腰痛に対する考え方~

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腰について
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腰痛はつらい症状の一つですよね。

腰は身体の中心に位置しているためどんな動きにも関連してきます。

そのため腰痛を引き起こしてしまうと活動に対して大きな影響を来してしまいます。

 

腰痛を引き起こすと、基本的に動けなくなります。

どう動かしても腰痛が出現するので、そのうち身体を動かすのが億劫になってきます。

そうなると本来の腰痛と合わせて二次的に発生する腰痛がさらに腰痛を強固なものにし、そしてややこしくします。

二次的な腰痛とは、痛いからといって動かさないために生じる”筋肉の緊張”が原因で生じる腰痛です。

 

このように腰痛を治すには単純なものではなく、問題が複合的に重なってるものを解決していく必要があります。

なので、短絡的に「腰痛にはこの運動がおススメ」とは言えないわけです。

「このような動きの時に生じる腰痛にはこの運動が有効」というようにある程度、具体的示されているものが信頼性は高いと言えるでしょう。

 

腰痛に対するトレーニングに関連する記事はこちらから。

腰痛を治すには横隔膜と骨盤底筋群の連動性が重要【Zone of Appositionについて】
今回は横隔膜と骨盤底筋群について書いていきます。横隔膜と骨盤底筋群は、体幹筋の中で上下に位置する組織になります。 「腹横筋と多裂筋で体幹の前後を支持し、横隔膜と骨盤底筋群で体幹の上下を支持する」、このように上下・前後からの支持により体幹を安定させているのがインナーマッスルになります。今回は上下の支持機構の組織の連動性を踏まえてまとめていきたいと思います。
インナーマッスルの代表格である腹横筋を鍛える意義と実際のトレーニング方法
腹横筋ですが、コルセット筋とも呼ばれており、お腹を覆っている筋肉になります。腹横筋が弱まってコルセットの役割を果たせなくなれば当然お腹が出てきます。さらに腹横筋はインナーマッスルであるため、弱化すれば当然姿勢も悪くなります。このインナーマッスルの代表格である腹横筋を鍛えるメリットと方法をご紹介していきます。

 

今回は、体幹伸展時の腰痛を治す方法を提示していきます。

□腰痛によっていつも中腰になって体を起こすことができない

□高いものをとる時に手を伸ばせない

□中腰の姿勢から体を起こすときに腰痛が出現する

などの症状がある場合は、多裂筋に対するトレーニングが効果的なことが多いです。

しっかり多裂筋を鍛えて腰痛の予防から改善までを図って行きましょう!!

 

 

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1.腰痛と関係のある多裂筋とは?

3D解剖学より引用

多裂筋は、体幹のインナーマッスルの内の1つと言われています。

体幹のインナーマッスルは主に、腹横筋・多裂筋・横隔膜・骨盤底筋群の4つの筋肉の事をいいます。

 

多裂筋自体は、腰部だけでなく脊柱全般に存在しています。

筋肉自体は”単関節筋”であり、姿勢保持筋としての働きが主になります。

 

その多裂筋も浅層から深層にかけて4つの層に分かれています。

M.E Lonnemann et al 2008wを一部改変し引用

このうち、第4層の”椎弓線維”により身体の滑らかな動きが出ていると言われています。

 

多裂筋に関する研究では、

上腕三頭筋の筋活動と多裂筋の筋活動を調べた研究があります。

その研究では、

①健常人

②腰痛のある方

③腰痛もあり腰部の不安定性をきたしている方

この3パターンを対象にし、筋活動を評価しています。

 

この時、健常者は上腕三頭筋が働く前に多裂筋は先行して働いていましたが、腰部に不安定性のある方の場合は上腕三頭筋の働きが先行し、多裂筋は遅れて収縮していました。

このことから、

不安定性のある方は本来の多裂筋の役割を果たせない

ということがわかります。

 

 

そもそも、多裂筋の本来の働きとは

体幹のインナーマッスルであるわけですから、”体幹の安定性に作用する”わけです。

身体の末梢の動きでも、”まずは体幹が安定してから末梢が動く”というパターンが正常になります。

 

しかし不安定性のある方は逆転してしまっているわけですから、当然、効率の悪い身体の使い方になっているわけです。

 

このように多裂筋の働きは身体活動にとって非常に大きな影響をもっている筋肉と言えます。

 

 

 

2.多裂筋の働きとは?

先程も少し話に出てきましたが、多裂筋の作用は主に

腰椎を支える(腰椎の安定化)

となります。

 

そのほか、筋肉の走行上体幹の伸展作用にも寄与します。

ただこの体幹の伸展作用は脊柱起立筋の方が圧倒的に働きが大きいです。

筋肉の容量的にもそうですよね。

なので体幹の伸展は主に脊柱起立筋が優位に働きます。(多裂筋も伸展に関与はしています)

 

同じ腰椎の伸展筋である

●脊柱起立筋

●多裂筋

この2つの筋の違いを理解しておく必要があります。

違いはいくつかありますが、重要なのは

”筋肉の長さが違う”

ということです。

 

要するに、

”単関節筋”か”多関節筋(二関節筋)”

かの違いです。

 

 

単関節筋は”多裂筋”となり、

多関節筋(二関節筋)は”脊柱起立筋”となるわけですね。

 

 

単関節筋は主に、姿勢保持筋(持久力)と言われています。

逆に、

多関節筋(二関節筋)は主に運動に作用する筋(パワー・瞬発力)と言われています。

 

だから多裂筋は腰椎の安定化(姿勢保持筋)が主な作用であると言えるんです。

 

 

3.多裂筋に関する知見

上記のように多裂筋の作用はある程度イメージできたと思います。

その多裂筋の作用を少し詳しく見ていきます。

 

●多裂筋の深層線維が腰椎のスタビリティーに関与

↳多裂筋の表層線維や脊柱起立筋は腰椎の伸展や回旋に関与している

 

●多裂筋の深層線維は表層線維や脊柱起立筋に比べてタイプⅠ線維を多く含む

↳タイプⅠ線維とは持久力に優れた筋線維のこと(タイプⅡ線維はパワー系)

 

●体幹の動きの際、多裂筋の深層線維は持続性(緊張性)に、表層線維や脊柱起立筋は相動的に働く

↳持続的に働く深層線維が主に姿勢保持筋として考えられる

 

●多裂筋の深層線維は腹横筋と協同して働く

↳体幹筋(インナーマッスル)の前後の関係性のこと

↳前方は「腹横筋」、後方は「多裂筋」となる

 

●腰痛に伴った筋の変化は、表層線維や脊柱起立筋よりも深層線維に大きく影響を及ぼす

 ↳腰痛が生じると体は屈曲パターンをとるため多裂筋は収縮力を失う

 ↳腰痛が軽減した後も多裂筋の萎縮は進む

 

 

上記のことから、

主に腰痛に関わっているのは、多裂筋の中でも深層線維であることがわかります。

深層線維は、椎弓線維でしたよね。

 

 

ですから、運動のポイントはこの椎弓線維を意識して行うことが重要になります。

そして、深層線維(椎弓線維)はタイプⅠ線維で持続性のある筋であるため、運動の方法としては、

●ゆっくりとした運動

●動きは最小限

●息を止めずに

この3点に注意して行う必要があります。

(速く大きな運動であればあるほどアウターの筋(大きな筋)が働くことになります)

 

 

 

このように多裂筋の中でも働き方が違うことがわかります。

その働き方が違うために、運動の方法も違いが出てきます。

なので方法論だけを知って、やみくもに実施しても効果は薄いということになりますね。

 

効果が出る方法には必ず理論や方法論があるということですね。

 

 

 

4.多裂筋を鍛えて腰痛を治す・予防する

次は実際に多裂筋のトレーニング方法です。

冒頭でも述べましたが、多裂筋が原因である腰痛は、主に「伸展時に生じる腰痛」となります。

伸展時に生じる腰痛がある場合は、多裂筋の運動実践前後で身体の伸展可動域を評価しておくと効果判定しやすいです。

ここで変化が出れば多裂筋が原因であることがわかり、かつ多裂筋もしっかり賦活ができていると判断できます。

 

①四つ這いでの多裂筋のトレーニング方法

 

この運動はよく見るものではないでしょうか?

この方法でも一応多裂筋の収縮は得られます。

ただ代償動作も出やすい運動になりますので注意は必要です。

 

□方法

四つ這い位で、一側上肢と対角にある下肢を同時に挙上する

※右上肢を挙上するなら、左下肢を挙上する

※なるべく多裂筋だけを収縮させたいなら上肢の挙上はなしで、下肢の挙上のみでOK。

□頻度

一度に行う回数として推奨するのは10回程度です。

回数は少なくても一回ごとに代償動作が出ていないかを確認しながら行うことと、多裂筋(背部)を意識しながら行うことがポイントになります。

□POINT

●息を吐きながらゆっくりとした動作で行う

●後頭‐背中のラインが一直線になっているか?

●腰椎中間位保持(ASIS-PSISを指標)

●剣状突起が手足の中央に落ちているか?

●回旋が入らないように(体幹や骨盤の回旋)

●4点支持となっているか?(どこか一つのポイントだけで支えていないか)

※回旋・ねじれ・ぐらつきを見る!

 

以上が、四つ這いでの多裂筋のトレーニング方法になります。

ただ、先程も述べましたが、

「この四つ這いでのトレーニングは多裂筋の個別的な収縮は得られない」

という所を理解しておいてください。

 

四つ這いでの運動の筋電図を調べた研究がありますが、

両側の腹斜筋や中殿筋など多数の筋肉の収縮が入ってきます。

その中の一部に多裂筋の収縮もありますよ。といった感じになります。

 

なので、多裂筋の運動にはなるけど多裂筋をメインで鍛えているわけではないということを理解していただければと思います。

 

 

次は、横向きで行うタイプの運動です。

②側臥位で行う多裂筋のトレーニング方法

 

□方法

●側臥位(股関節45°屈曲位)で腰椎中間位

●上位側の膝関節にボールを置き、大腿骨長軸方向に押す

●上位側多裂筋を触診して、緊張を確認

●その状態を10秒間キープ

※本当にこれだけでいいの?っていうくらいまずは小さな運動から行います。

※頑張ろうとすればするほど多裂筋には収縮が入りません。

 

□頻度

頻度は、10秒間キープするのを10回程度となります。

こちらも腰が引けていないか・変なところに力が入っていないかを確認しながら行うことが大事になってきます。

□POINT

●側臥位で上側になった多裂筋の運動(左側を下にした側臥位であれば右側の多裂筋)

骨盤を動かさないように軽い小さな運動で行なう

 

①の四つ這いでの運動と違って、かなり地味な運動になります。

そして楽です。

鍛えている感覚はそんなにないです。これは、、、

ただインナーマッスルはそもそもパワーを出す筋ではないため、負荷量はそんなに関係ありません。

大事なのは、

多裂筋にどれだけ意識を持っていけているか

です。

実際に収縮を感じながら行なったほうが効果は高いです。

収縮を感じる場所としては、上後腸骨棘(PSIS)の内側部分当たりを触知すると収縮は感じ取りやすいです。

3D解剖学より引用

そして持続性の必要な筋なので、等尺性収縮(一定時間収縮を入れる方法)が有効になります。

このトレーニングの方が、より多裂筋の収縮は入りやすくなります。

 

以上の2つが今回紹介するトレーニング方法になります。

冒頭でも述べましたが、

□腰痛によっていつも中腰になって体を起こすことができない

□高いものをとる時に手を伸ばせない

□中腰の姿勢から体を起こすときに腰痛が出現する

このような症状がある方は多裂筋のトレーニングを実践することをおススメします。

 

 

5.腰痛は軽減しても多裂筋の萎縮は止まらない!?

腰痛に関する研究で、以下のような結果が確認されています。

 

 

要するに、

急性腰痛で痛み自体は緩解を迎えても組織の弱化は進んでしまう

ということです。

 

 

なので、ぎっくり腰など起こした人は後に手術な必要な程の腰痛や神経障害をきたしてしまうんでしょうね。

 

この事実を知っていれば、多裂筋を鍛える必要性がわかり、腰部疾患の再発を少しでも防ぐことができますね。

 

 

6.多裂筋の委縮はなぜ起こる!?

先程の話の続きですが、

腰痛後、痛みは軽減しても組織の委縮は進むとありましたが、

「なぜそのようなことが起こるのか?」

についてです。

 

図を見ればわかりますが、

 

問題なのは「防御収縮による屈曲パターンが促通される」いうことです。

 

多裂筋は”伸展筋”ですから屈曲反射が優位になれば

当然、多裂筋の働きは落ちてしまいます。

 

結果、多裂筋は屈曲反射により機能不全に陥り、委縮が進むという悪循環に陥るということです。

 

 

7.まとめ

今回は、多裂筋と腰痛の関係性と、多裂筋のトレーニング方法についてまとめていきました。

運動以外にも、なぜ多裂筋のトレーニングが必要なのか、多裂筋の萎縮はなぜ起こるのか?なども併せて書いていきました。

 

なんとなく「多裂筋は腰痛に関連している」というイメージは湧きますが、

なにがどうなって多裂筋が腰痛に関わる筋なのか?がわかっているのとわかっていないのでは

効果に差が出てきます。

 

なので、自身の腰痛を治療する人もセラピストの方も

多裂筋をトレーニングする意義を理解した上で実践して頂ければと思います。

 

それでは、本日この辺で!

本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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コメント

  1. ゴリゴリ より:

    側臥位で行う多裂筋のトレーニング方法でボールを上位側の膝関節の上に置いて大腿骨長軸方向に押すと書いてありますが、ボールを壁等に押し付けて行うとよろしいのですか?

    • kabosu1108 より:

      ゴリゴリさん
      コメントありがとうございます。
      ボールを使って行う方法でも大丈夫です。
      ですが、実際にボールで行うとブレやすいため、多裂筋の収縮よりも他のアウターの要素が強くなってしまう印象があります。
      私の場合は、ボールの代わりに自身の手で膝を抑えるようにしています。そこで大腿長軸方向に患者さんがしっかり押せるようにコントロールしています。

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