どうも。
kabosuです。
今回も前回の症例検討の中に出てきた評価方法について書いていきます。
前回の記事
そして、今回は”大腿筋膜張筋”の異常を評価する「Oberテスト」についてまとめていきます。
腰痛では、伸展型の腰痛の際に、Oberテストをチェックしますし、
膝痛の時は、大腿筋膜張筋が短縮しているのか?遠心性で引っ張られている状態なのかを判別するときにOberテストをチェックします。
意外と臨床の中で使用頻度の多い評価方法かと思います。
しかし評価時の代償動作が多く、評価自体の精度が低いことが問題として挙げられます。
そのため、この記事ではどうすればある程度前後評価でぶれなく出来るかを書いていきたいと思います。
1.Oberテストとは?
Oberテストは、大腿筋膜張筋や腸脛靭帯の短縮を評価するテストです。
Oberテストは人名からつけられた名前なので、
・オーバーテスト
・オーベルテスト
などと呼び名が多少違うことがありますが、どれも同じテストです。
このOberテストですが、トーマステスト同様、大腿筋膜張筋や腸脛靭帯の短縮だけでなく他の組織の問題の評価も可能になります。
トーマステストの記事はこちらから
腸腰筋や大腿直筋の短縮を評価するトーマステストの方法と解釈の仕方

2.Oberテストの評価方法
Oberテストの評価方法は次の通りです。

wang tg,jan mh,et al.:assessment of stretching of the iliotibialtract with Ober and modified Ober tests:an ultrasonographicstudy.Arch Phys Med Rehabil.2003
より一部改変し引用
【検査方法】
●側臥位(横向き)になる(この時、下側の膝は曲げておく)
●検査者が体幹部を安定させた状態で、上側の足を手で持ち上げる(この時膝を60~90°程度曲げる)
●持ち上げた下肢を離す(重力によって落下していく(股関節内転が生じる))
●この時、手を離してもなめらかに落ちない場合、大腿筋膜張筋、腸脛靭帯の異常を示唆する
以上が簡単なOberテストの評価方法です。
これに加え、以下の2点も併せて評価するとより詳細に原因特定が可能になります。
●寛骨(骨盤)の固定の有無での変化(腰部の問題か殿部の問題かの判別)
【寛骨を固定しない場合】
腰方形筋の伸張性の評価も含まれるため、腰部・殿部の評価になる

【寛骨を固定する場合】
腰部から下の殿部のみの評価になるため、ここで異常がみられれば殿部の問題が示唆される

●膝屈曲位と膝伸展位での変化(大腿筋膜張筋の問題か中殿筋前部線維の問題かを判別)
【膝屈曲位の場合】
腸脛靭帯は膝屈曲位でゆるむとされているため、ここでOberテストに異常があれば中殿筋前部線維の問題を示唆する
【膝伸展位の場合】
腸脛靭帯は膝伸展位で伸長されるとあるため、ここでOberテストに異常があれば大腿筋膜張筋の問題と示唆される
※膝の屈曲の操作での判別は大腿四頭筋の緊張も影響するため、明確ではない印象があります。ここで判断する場合は大腿四頭筋の問題も考慮する必要性があると思われます。
wang tg,jan mh,et al.:assessment of stretching of the iliotibialtract with Ober and modified Ober tests:an ultrasonographicstudy.Arch Phys Med Rehabil.2003より一部引用
3.Oberテストの解釈の方法
上記の評価方法でも少しふれましたが、微妙な操作を加えることで大腿筋膜張筋や腸脛靭帯の短縮を評価するだけでなく、腰部の問題や中殿筋前部線維の問題も評価することができ、アプローチの対象をグッと絞れるようになります。
以下に詳細を説明していきます。
①通常Oberテスト
検査側のは下肢が外転位から内転位にスムーズに下垂しない場合、
大腿筋膜張筋や腸脛靭帯の短縮を疑います。
※腰方形筋の代償(体幹の側屈)にて内転を出してしまう可能性がある
②寛骨を固定したOberテスト
Oberテスト時に寛骨を固定することで腰方形筋(体幹の側屈)での代償を防ぐことができます。
そうすることで、大腿筋膜張筋・腸脛靭帯か中殿筋前部線維かの2点に絞って問題点を評価することができます。
※評価するとき(内転方向に下垂させる)に骨盤の下制を防ぐことが重要
③Oberテストを膝を屈曲位で行うか伸展位で行うか
ある文献では、超音波所見により、膝伸展位でOberテストを行った方が腸脛靭帯は伸長されていたという研究報告があります。
興味があればこちらをご参照ください。
wang tg,jan mh,et al.:assessment of stretching of the iliotibialtract with Ober and modified Ober tests:an ultrasonographicstudy.Arch Phys Med Rehabil.2003
そのため、
膝屈曲位でOberテストを行った際、陽性であれば”中殿筋前部線維の問題”を疑います。
※膝屈曲位で腸脛靭帯はゆるむため、内転にはスムーズに下垂するはず。それでも下垂しない場合は二関節筋ではなく単関節筋の問題を疑う(中殿筋前部線維)
逆に膝伸展位でOberテストを行った際、陽性であれば”大腿筋膜張筋・腸脛靭帯の問題”を疑います。
※膝伸展位で腸脛靭帯は伸長されるため
以上がOberテストの解釈の仕方です。
このように、ただ単にOberテストを診るよりも、少しずつ操作を加えて変化を評価することで、より細かい原因の特定が可能になります。
ただ、膝屈曲位・伸展位のどちらが伸長されるかに関しては議論が分かれているという説もあります。
実際に評価を行う際、膝伸展位の方がやりやすいように感じることがあります。
そこに関しては、大腿四頭筋の問題も考慮する必要があるかと思います。
大腿四頭筋は膝伸展筋であり、その中の大腿直筋は股関節の屈筋でもありますそのため、Oberテストで股関節伸展位・膝屈曲位にもっていけば大腿四頭筋の張力は高まります。
なので、大腿四頭筋が固い人は膝屈曲位でOberテストを行う際は少し窮屈になることが考えられます。
この辺のバイアスを考える必要はありそうです。
ただ、私の場合は、この膝屈曲位と膝伸展位の2つのパターンでOberテストを行なって、どちらも内転角度に変化がない場合は、二関節筋の影響は関係ないものと判断し、中殿筋前部線維の問題と考えるようにしています。
そして、実際に中殿筋前部線維に対しダイレクトストレッチを行い、再度Oberテストの評価を行っています。そこで変化が出れば中殿筋前部線維に対するケアを考えていくようにしています。
4.Oberテストの代償動作について
まずOberテストは「側臥位」で行うテストです。
そのため支持面が少なくなり、不安定になることから代償が出やすくなります。
その具体例を挙げていきます。
①股関節屈曲位で評価してしまう
Oberテストは「股関節伸展位で行うテスト」です。
大腿筋膜張筋は股関節屈曲筋であるため、伸展位にもっていかなければ大腿筋膜張筋の伸長位にもっていけないため、確実な伸長テストが行えなくなります。
そのため本来、大腿筋膜張筋の短縮があっても”そうでないように見える”ことがあります。
なので、Oberテストは「股関節伸展位」で行うことを意識して評価していきます。
図:股関節屈曲の代償がある場合のOberテスト
②体幹の回旋が出る場合
股関節伸展を出そうと誘導する際、体幹を固定しておかないと体幹の回旋が出てしまいます。(側臥位から仰臥位になってしまう)
そうなると、「股関節の伸展」ではなく「ただの体幹の回旋」になってしまい、結果大腿筋膜張筋の短縮はしっかり評価できないということになってしまいます。
評価の際は、体幹をセラピストの身体で固定した状態で股関節の伸展を誘導するようにします。
以上のような代償動作をしっかり理解し、まずは代償動作の出ない環境を作ってから評価を行うことで精度は高まってきます。
仮に多少の代償動作が出たとした場合は、前後評価で同じくらいの代償動作をだすように意識すると評価結果自体のぶれはなくなってきますので、まずは代償動作の有無を理解することと、どんな代償動作が出ているのかをわかるようにしていくことも重要かと思います。
図:体幹の回旋による代償がある場合のOberテスト
5.まとめ
今回は大腿筋膜張筋や腸脛靭帯の短縮を評価するOberテストの方法と解釈の仕方についてまとめていきました。
普段臨床で使うことの多い評価法ですが、やはり代償動作というものは出やすい評価法の一つではないかと思います。
せっかく細かく鑑別できる評価法でも代償が入ってしまえば評価自体の精度が落ちてしまいます。
なので、代償動作を出さないようなセラピストの立ち位置や声掛けなども非常に大切になってくると思います。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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