外側大腿皮神経の絞扼による症状かどうか評価する方法について

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理学療法
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「歩くとき太ももの外側がしびれる感じがします」

「太ももの付け根のところを抑えると痛みがあるんです」

このような訴えを聞くことは臨床上多いです。

感覚障害なので、脊椎疾患を第一に考えがちですが意外と末梢神経の問題であることもあります。

 

この場合、以下のような負のループを辿ることもあります…

ヘルニアの診断が下りる⇒リハビリの指示にてリハ開始⇒腰部へのアプローチ⇒症状に変化がなく漫然としたリハビリとなる⇒いつまでも続くリハビリ

このように、原因の特定が明確でない場合、これといった改善が得られないまま、ずるずると日にちだけが進んでいくことも考えられます。

 

今回は、そういった判断の難しい神経症状を解釈する一つのツールを紹介します。

原因の特定が進んでいくと、アプローチすべきポイントもおのずとはっきりしてくるため、理解しておきたいポイントですね。

ではよろしくお願いします。

 

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①外側大腿皮神経の解剖

図:外側大腿皮神経の走行と支配領域について

プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版 [ 坂井 建雄 ] より一部改変し引用

 

外側大腿皮神経は第2・3腰椎の神経根から起始し、骨盤内で腸骨筋の表面を走行し、上前腸骨棘の約2cm内側で鼠径靭帯と縫工筋に挟まれるような形で骨盤外へ出て、大腿外側へ分布します。

※大腿の外側面に出て皮下に現れる感覚枝(感覚性の神経)

 

外側大腿皮神経は鼠径部の筋裂口内の腸骨筋表層に位置し、骨盤内から骨盤外へ出る境界部では非常に狭いスペースを鋭角に曲がっているため、機械的に絞扼や摩擦されやすい環境下にあります

 

さらに、同部の外側大腿皮神経は、鼠径靭帯と共に、腸骨筋や縫工筋に被覆されているため、これらの筋に攣縮や短縮に伴う筋内圧が上昇した場合、外側大腿皮神経の絞扼はより顕著になります

 

主な症状としては、大腿外側部のしびれ感,感覚過敏,感覚鈍麻であり、鼡径靱帯による圧迫などにより生じます。

外側大腿皮神経の絞扼は手術後や妊娠,糖尿病,肥満に関連して起こるとされています。

 

 

②外側大腿皮神経による症状の評価方法

以下に外側大腿皮神経に対する評価方法を紹介します。

神経の絞扼を緩めて症状の寛解を確認する方法や、伸長刺激にて症状の再現を誘発する方法などがあります。

①pelvic compression test

以下は、pelvic compression testという”骨盤を圧迫するテスト”について紹介しています。

このテストの原理としては、

「骨盤を圧迫することで、鼠径靭帯が緩み、外側大腿皮神経の圧迫が改善されるため症状が寛解する」

というものになります。

つまり、骨盤の圧迫によって症状が寛解されれば外側大腿皮神経の絞扼が原因であると判断します。

 

では、具体的な方法です。

●対象者は側臥位の状態となり、検査者は対象者の背側に位置する

※検査側を上にした側臥位を取る

●骨盤を下へ45秒程度圧迫する

※30秒程度で症状が軽快すれば陽性と判断する(感度95%、特異度93.3%と報告されている)

※このpelvic compression testは、高感度で特異的なテストであり、腰仙神経根痛と区別するのに役立つとされる

S A Reza Nouraei  A novel approach to the diagnosis and management of meralgia paresthetica Neurosurgery 60:696–700, 2007より引用

 

 

外側大腿皮神経の伸長テスト

外側大腿皮神経の走行は上前腸骨棘の内側から表層に出て尾側かつ外側へ向かい、大腿遠位から後外側まで枝を伸ばしています。

 

そのため、股関節の伸展・内転・外旋で伸張されるわけですね。

 

このような外側大腿皮神経の走行を意識して、股関節の伸展・内転・外旋方向への動きを誘導することで疼痛が増悪するようであれば、外側大腿皮神経の問題であると判断します。

 

前側方侵入のTHA術後で大腿外側皮神経による症状を疑う場合は、上記伸長方法は脱臼肢位となってしまうため、pelvic compression testの方を選択して評価することが望ましいですね。

 

 

画像所見と身体所見が一致しない場合は、末梢神経の絞扼を疑う

腰部椎間板ヘルニアなど脊椎疾患において外側大腿皮神経支配域である大腿外側から前面の痺れおよび放散痛を訴える例も存在します。

 

このような例においては、髄核の膨隆・脱出による神経根の圧迫が痺れや放散痛の原因と考え、治療の対象とされることが多いですが、症状とヘルニアの高位診断が一致しないこともあります。

 

このような場合は、末梢神経の絞扼の可能性を考えていく必要がありますね。

 

3.まとめ

今回はヘルニアによる症状と誤った診断をされることのある、外側大腿皮神経の絞扼についてまとめていきました。

臨床で腰痛および下肢の神経症状のある患者さんのリハビリを行う際、画像診断の結果と訴える症状に乖離があることは多々あります。

 

担当医からは「ヘルニアがあるからそれが原因でしょう」と言われ、患者さんもそう理解し、中々症状が治らないと悩んでいるといった負のループを繰り返していることもしばしば見かけます。

 

今回紹介したような、評価方法は治療の中で確認できるものであり、比較的使用しやすい評価ツールではないかと思います。

もし「外側大腿皮神経の絞扼が原因では?」と思うような場面に遭遇した場合は、一度評価をしてみてはと思います。

 

それでは本日はこの辺で。

今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。

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