歩くとき足の付け根が痛くて気持ちよく歩けないわ。
足に体重をかけると股関節の前の方がキヤっとする感じがして違和感があります。
このような症状を訴えを聞くことは、リハビリを行っていると割と多いです。
リハビリの世界ではスポーツ場面でこの鼠径部痛の悩みが多く挙がっていますね。
高齢者を対象とした入院リハビリでも、例えばTHA術後なんかは思っているよりも鼠径部痛を訴える例は多く、スポーツ現場に携わるセラピスト以外でも鼠径部痛への理解はある程度必要なのだと感じます。
ちなみに以前も鼠径部痛の記事を更新しています。
今回は、そういった鼠径部痛を5つの原因に分類したドーハ分類について記事にして理解を深めていきたいと思います。
1.ドーハ分類について
2014年、First World Conference on Groin Pain in Athletes in Dohaで鼠径部痛は5つの関連部位に分類されました。
この分類の特徴は、groin pain(鼠径部痛)を画像診断ではなく「圧痛」と「抵抗時痛」により、5つの原因部位に分類している点にあります。
文献:Weir A, et al : Doha agreement meeting on teminology and definitions in groin pain in athletes.Br J Sports Med 2015;49:768-774
このように、画像所見などを用いないことによってより現場での早期診断が可能になってきます。
圧痛所見や抵抗時の痛みの評価によって原因部位を特定していくことは理学療法士にとって日常茶飯事であることから、このドーハの分類は理解しやすい内容になりますね。
圧痛所見や抵抗時の痛みの評価によって原因部位を特定していくことは理学療法士にとって日常茶飯事であることから、このドーハの分類は理解しやすい内容になりますね。
ドーハ分類(5つの原因)
以下の5つが鼠径部痛の部位別にわけた原因となります。
①内転筋関連鼠径部痛(adductor-related groin pain)
②腸腰筋関連鼠径部痛(iliopsoas-related groin pain)
③鼠径部関連鼠径部痛(inguinal-related groin pain)
④恥骨関連鼠径部痛(pubic-related groin pain)
⑤股関節関連鼠径部痛(hip-related groin pain)
①内転筋関連鼠径部痛(adductor-related groin pain)
こちらは名称通りですが、内転筋に一致した圧痛と内転筋の収縮に対して抵抗した際に生じる痛みが生じる鼡径部痛になります。
こちらは以前紹介した記事に具体的な評価方法を記載しています。
とにかく、
●内転筋を圧迫した際に鼠径部痛が発生する
●股関節を内転に対する抵抗運動で鼠径部痛が誘発される
この2点がある場合は、内転筋が関連する鼠径部痛であると判断されるわけですね。
②腸腰筋関連鼠径部痛(iliopsoas-related groin pain)
この腸腰筋関連鼠径部痛では、
股関節屈曲運動に対する抵抗運動時に鼠径部痛が生じる、もしくは股関節伸展時の伸張時痛(鼠径部に痛みが出現する)
にて診断されます。
とにかく、腸腰筋の筋収縮や筋そのものをストレッチし、腸腰筋に刺激をいれることで鼠径部痛が誘発されるかを見ていきます。
圧痛所見も評価対象になりますが、正確に触診できているか若干不明瞭な印象がありますね…。
③鼠径部関連鼠径部痛(inguinal-related groin pain)
鼠径部関連鼠径部痛に関しては、鼠径管領域の痛みの場所と鼠径間の圧痛のことを言います。
ただし、鼡径ヘルニアとの鑑別が必要であり、ヘルニアが触知はされてはいけません。
また、腹筋群の抵抗テストまたはバルサルバ・咳・くしゃみで痛みが悪化した場合、鼠径部関連鼠径部痛の陽性と判断するようです。
鼠径部関連鼠径部痛では、腹筋群との関わりが強いようですね。
腹筋の収縮に伴って鼠径部痛が生じる場合のことをここでは言っているようです。
④恥骨関連鼠径部痛(pubic-related groin pain)
恥骨関連鼠径部痛では、恥骨結合とすぐ隣の骨の局所的な圧痛のことを指します。
この領域の鼠径部痛に関しては疼痛誘発テストはなく、圧痛のみで診断するのが特徴になります。
恥骨結合は場合によっては触りにくい部位になるため、
基本的には指先での刺激ではなく、手掌部を使って触知するように注意します。
⑤股関節関連鼠径部痛(hip-related groin pain)
股関節内に原因がある鼡径部痛です。
ドーハ分類では、股関節の痛みは、鼠径部の痛みの考えられる原因として常に考慮されるべきであるとされ、上記4つのgroin painの分類に追加されています。
股関節に関連する鼠径部の痛みは他の原因と区別するのが難しい場合があり、他のタイプの鼠径部痛と共に評価を進めていくことが望まれています。
ドーハ会議では整形外科的テストである、FABER(Flexion abduction external rotation)テスト、FADIR(Flexion adduction internal rotation)テストの実施を推奨していますが、これらを含む股関節疾患に対する徒手診断は感度は高いですが特異度は低いことがデメリットとして挙げられます。
ただし、これらのテストは、」股関節関連の鼠径部を除外するために、臨床検査が実際に役立つ可能性があることを意味するため、鼠径部痛がある場合は評価を行っていく必要があります。
3.まとめ
今回は、鼠径部痛の分類について、2014年に紹介されたドーハ分類を用いてまとめていきました。
以前の記事では、①内転筋の問題・②腸腰筋などの股関節屈筋群の問題・③腹筋群の問題といった形で今回の記事と似てはいるものの、公式的に分類された鼠径部痛について言及したものではなかったです。
そこで今回は、ドーハ分類を用いて正式に鼠径部痛の原因の分類を紹介していきました。
内容が若干重複する部分もあるため、見比べながら記事を読んで頂ければ幸いです。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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