どうも。
KABOSUです。
今回は、
胸郭出口症候群に対する整形外科的テストの方法について
まとめていきます。
前回前々回と、胸郭出口症候群について記事を書いていきました。
記事の内容についてはこちらからどうぞ。
胸郭出口症候群に対する理学療法について~絞扼部位や姿勢との関係性~
胸郭出口症候群の実際の体験と、胸郭出口症候群の病態や理学療法アプローチなどをまとめています。
胸郭出口症候群を判定するには整形外科的テストを用います。
前々回の記事でも評価内容に挙がっていましたが、具体的な方法の説明をしていませんでした。
そこで、今回は胸郭出口症候群に対する整形外科的テストをまとめていきたいと思います。
1.胸郭出口症候群の検査一覧
胸郭出口症候群に対する整形外科的テストは以下の通りです。
●Adson test(アドソンテスト)
●Eden test(気をつけ姿勢テスト
●Wright test(ライトテスト)
●Morley test(モレ-テスト)
●Roos test(ルーステスト)
Adson test(アドソンテスト)
図:Adson test
【検査肢位】坐位にて、検者は相対する
【検査方法】両側上肢を大腿前面にのせ、検者は両側橈骨動脈の拍動を確認し、その後に頭部を伸展・患側回旋させて深呼吸させる
【判定基準】患側橈骨動脈の脈拍が微弱か消失すれば陽性と判断する
【評価の解釈】テスト陽性で”斜角筋症候群”が疑われる
※斜角筋症候群:前斜角筋異常により、斜角筋三角部での鎖骨下動脈および腕神経叢の圧迫が起こり症状を引き起こす
Eden test(気をつけ姿勢テスト)
図:Eden test
【検査肢位】坐位または立位で、検者は後方に位置する
【検査方法】両側上肢を下垂した状態で、両側橈骨動脈の拍動を確認した後、肩を後下方に引かせ、顎をひかせる
【判定基準】患側橈骨動脈の拍動が微弱か消失で陽性と判断する
【評価の解釈】テスト陽性で”肋鎖症候群”が疑われる
※肋鎖症候群:肋鎖間隙部での鎖骨下動脈および腕神経叢の圧迫が起こり症状を引き起こす
Wright test(ライトテスト)
図:Wright test
【検査肢位】坐位にて、検者は後方に立つ
【検査方法】患側上肢が下垂した状態で橈骨動脈の拍動を確認した後、患側上肢を外旋・過外転させる
【判定基準】患側橈骨動脈の拍動が微弱か消失で陽性と判断する
【評価の解釈】テスト陽性で”過外転症候群”が疑われる
※過外転症候群:小胸筋の問題により烏口突起が下方に引き下げられ、腋窩動脈を圧迫することで症状を引き起こす
※健常者においても陽性率が高いと言われている
Morley test(モレ―テスト)
図:Morley test
【検査肢位】坐位にて、検者は後方に立つ
【検査方法】両側鎖骨上窩部で、前斜角筋腱付着部を手指で圧迫
【判定基準】患側に圧痛または放散痛の出現で陽性と判断する
【評価の解釈】テスト陽性で”胸郭出口症候群、頚腕症候群、頸部脊椎症”が疑われる
※モレ―テストは特異性に乏しい評価方法と言われている
Roos test
【検査肢位】坐位にて、検者は後方に立つ
【検査方法】ライトテストと同じように、腕を外転90度、外旋90度、肘を90度曲げた状態で指の曲げ伸ばしを行う
【判定基準】指の曲げ伸ばしを3分間続けられない場合、陽性と判断する
【評価の解釈】テスト陽性で、”斜角筋症候群”が疑われる
※早期に上肢の疲労や疼痛が誘発される場合や三分間耐えられない場合は、 斜角筋群による鎖骨下動脈の圧迫を示唆する
2.胸郭出口症候群に対する整形外科的テストの問題点
胸郭出口症候群の症状は、上肢のシビレや痛み、脱力といった運動・感覚障害など様々です。そのため、症状が脊椎疾患や末梢神経障害では説明がつかないという除外診断と、胸郭出口症候群誘発テスト(整形外科的テスト)が陽性であることを根拠に診断されます。
しかし、胸郭出口症候群誘発テストの感度・特異度は低いことが報告されています。
つまり、評価の整合性が低いということですね。
ただ、その中でもRoos testやMorley testの信頼性は高い値を示しています。
表:胸郭出口症候群誘発テストの信頼度
このように評価によって差が出ていることに関しては、胸郭出口症候群のタイプが関与しているとされています。
胸郭出口症候群のタイプとは、神経性の胸郭出口症候群なのか?、血管性の胸郭出口症候群なのか?ってことです。
前回の記事でも少し述べましたが、胸郭出口症候群の約95%が神経性の胸郭出口症候群であると言われています。
気になる方はこちらの記事をご覧ください。
胸郭出口症候群に対する理学療法について~絞扼部位や姿勢との関係性~
このように、神経性の胸郭出口症候群が多いとされる中で、感度が低いAdson testやEden test、Wright testは実は脈管テストといって、血管性の胸郭出口症候群を評価するものになるわけです。
※Wright testは感度は比較的高いですが、特異度が低いのが難点です(健常者も陽性反応が出る)
そのため、血管系の圧迫による症状よりも、神経絞扼や神経牽引などの神経症状を誘発させるRoos testやMorley testは陽性率が高く、脈管テスト病態との適合性が低いため信頼性が低くなると考えられています。
上記のように、胸郭出口症候群の誘発テスト(整形外科的テスト)は感度・特異度が低いものが多く、それが確定的な診断ができない大きな原因の一つになっているわけです。
そのため、整形外科的テストと合わせて、症例の姿勢や動作などから腕神経叢へのストレスを考えていく必要があります。
3.まとめ
今回は、胸郭出口症候群の整形外科的テストについてまとめていきました。
整形外科的テストは、原因の特定をするために重要な評価の一つになります。
しかし、感度や特異度といった、評価そのものの整合性をみていくと必ずしも重要なテストではないことがわかってきます。
やはり、姿勢や動作を含めて複合的に原因を捉えていくことが大事になるんですね。
整形外科的テストのデメリットをしっかり理解したうえで原因の特定のために一つの評価ツールとして使っていくようにしていきましょう。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!!
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