私はこれまで病院やクリニックで理学療法士として勤務してきました。
現在は入院患者さんに対してリハビリを行っているため聞くことは少なくなりましたが、
以前は外来患者さんに対応することが多かったため、ある質問を結構な頻度で聞いていました。
それは、
「腰が痛くなったらどこに行ったら良くなりますか?」
です。
病院で勤務していると上記のような質問をよく受けます・・・
これに続いて、
「腰が痛くなってどうしようもなくなって困ったけど、どこに行ったらいいかわからなかった」
「困ったから近くの病院(整骨院)にとりあえず受診してみた」
このような感じで、腰が痛いけどどうしていいかわからんからとりあえず受診した的な人が多いです。
※周囲の人に聞いてきたなど口コミもあります。
世間からの信用度でいけば”病院”というのは非常に有利な位置にいると思います。
しかし診察までに時間がかかるや行ったはいいが薬しかもらえなかったなどの意見もちらほら・・・
その点、整骨院などの場合は、基本的に行けば治療は受けられるため、治る治らないは別として対応力は高いものと思います。
1.腰痛を診ることのできる機関
病院(整形外科・ペインクリニック)
整骨院
整体院
鍼灸
60分3000円などのマッサージチェーン店
2.それぞれの施設のメリットとデメリット
①病院(整形外科)
≪メリット≫
□病院では”画像診断”が可能になる。
□腰痛に対して薬物療法がおこなえる
□状況に応じてリハビリが行える
□保険診療なので比較的安価に受けられる
【画像診断とは?】
レントゲンやCTやMRIのことで、ヘルニアなどの神経の圧迫や狭窄などを診断するために用いられるもの
病院の場合、対象者を総合的に見ることができます。
まずはDrが診察し、問題がありそうなら画像診断を行います。
そこで手術が必要かどうかを判断します。
手術の必要がなければ、薬物療法(痛み止めなど)やリハビリなど臨機応変に対応できます。
リハビリでは腰痛に対して、腰の負担になっている問題に対し運動と徒手介入を合わせてアプローチするとともに腰に負担のかからない姿勢・動作指導を行います。
≪デメリット≫
□待ち時間が長くなることがある
□訴えよりも症状で判断されがち
□望んでいる治療が受けられないことがある
※リハビリを受けたくても服薬のみで対応されることもある
□基本的に対症療法であるため改善までに時間を要すことがある
手術を受けるにしても薬をもらうにしてもリハビリを受けるにしてもまずはDrの診察が必須になります。
つまり入口が狭い(Drに対して患者さんの数が多すぎる)ため待ち時間が発生します。
②ペインクリニック
≪メリット≫
□痛みに特化した治療が受けられる
□上手くいけば劇的な改善がみられる
≪デメリット≫
□痛みを抑える事がメインなため、本質の問題がおざなりになっている可能性がある
□薬の量が増えることも・・・
③整骨院
≪メリット≫
□Drの診察がないため、比較的スムーズに治療が受けられる
□保険適応のため継続して治療に通いやすい
□腰痛や肩こりなど特定の症状に特化した整骨院が多い
≪デメリット≫
□詳細な検査が出来ない(機器がない)
□治療内容はマッサージなど身体に触れることがメインなので患者は依存的になりやすい
(痛みが慢性化する可能性もあり)
④整体院
≪メリット≫
□自費でやっているため、その分治療技術が高い
□治療効果が高いため短期間で改善できることが多い
≪デメリット≫
□自費であるため一回の治療費が高い(保険きかないため)
□誰でも整体師と名乗れるので素人がやっていることもある
⑤鍼灸
≪メリット≫
□ポイントが合えば劇的な変化が期待できる
□トレーニングなど身体を動かすことがない
≪デメリット≫
□鍼を打つことに抵抗感がある(人のよっては)
□ポイントが合わなければ効果は薄い
⑥60分3000円などのマッサージチェーン店
≪メリット≫
□比較的安価で長時間治療が受けられる
□料金も決まっているので通いやすい
≪デメリット≫
□短期間で技術を学んだ人がセラピストであることがほとんどである
□毎回セラピストが変わる(指名制度)
3.ここがポイント!腰痛の適切な治療を受けるために覚えておくべきこと
腰痛になった場合、
□早急に治療を受けるべきかどうか
□どこに行けばいいか
を判断できると適切な治療を受けることができます。
逆に判断を間違うと不適切な治療を受けることになり、かえって腰痛を悪化させてしまう可能性もあります。
このように悪化を招かないように自分自身でもある程度の知識を持っておくことは大切です。
で、腰痛を判断するには”レッドフラッグ”を知っておくといいかと思います。
レッドフラッグとは?
・レッドフラッグ=身体的要因(重大な脊椎病変の可能性があるかどうか)
・患者の根底にある重大な病態によるリスクの可能性を疑う症状や徴候を表すもの
要するに、手術が適応になる状態のことを言います。
【例】ヨーロッパの腰痛ガイドラインより
□発症年齢が20歳未満か55歳超
□最近の激しい外傷歴(高所からの転落、交通事故など)
□進行性の絶え間ない痛み(夜間痛、楽な姿勢がない、動作と無関係)
□胸部痛
□悪性腫瘍の病歴
□長期間にわたる副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)の使用歴
□非合法薬物の静脈注射、免疫抑制剤の使用、HIVポジティブ
□全般的な体調不良
□原因不明の体重減少
□腰部の強い屈曲制限の持続
□脊椎叩打痛
□身体の変形
□発熱
□膀胱直腸障害とサドル麻痺
腰痛に限局して言えば、
□性的障害が生じている(勃起不全など)
□サドル型麻痺を生じている
□膀胱直腸障害を呈している(尿漏れなど)
□腰痛とともに下肢の筋力低下(部分的な)を来している(膝折れが起こるなど)
□自分の足がどう動いているかわからない(感覚の障害)
など進行性の症状がある場合は、手術適応となります。
このように、レッドフラッグにかかる問題があると判断した場合は、
迷わず”病院”を受診することをおススメします。
さらに、より専門に診てもらうため同じ整形外科でも”脊椎外科”がある病院やクリニックにいくことをおススメします。
逆に、上記のレッドフラッグにかからない腰痛は無理に病院を受診し画像診断など受ける必要はないということです。
あまり気にしないほうが治る腰痛もあるわけです。
つまり精神的な問題ってことですね。
こちらはイエローフラッグという括りで説明されます。
イエローフラッグとは?
イエローフラッグは「心理社会的リスクファクター」といえるもので、腰痛発症に深く関わり、腰痛の慢性化、職場復帰の遅延化、再発率を高めるリスクファクターである
要するに、
「心理的な問題が腰痛を慢性化させている」
ということです。
具体的な例を挙げます。
□痛みが完全に消えてからでなければ、日常生活や仕事には戻れないと考えている。
□日常生活や仕事によって、腰の痛みが強くなると思っているので、元の生活に戻るのが不安である。
□腰の痛みを消すのは、難しいと信じている。
□長い間安静にしたり、必要以上に休息をとったりする。
□0~10までの尺度で痛みをきかれる時、10を超えるようなきわめて激しい痛みを訴える。
□治療者や治療方法、医療機器に対する依存心が強い。
□生活保護(所得保障)や医療費の問題で紛争していて、その解決が遅れている。
□絶望感と恐怖心をいだかせる(車椅子生活を連想させるような)診断名を告げられた。
□受け身的な治療を続けているうちに治療への依存心が強くなり、腰痛がさらに悪化している。
□日常生活や仕事によって強くなった痛みに対する恐怖心がある。
□自分は役立たずで、誰にも必要とされていないと感じている。
□配偶者やパートナーが過保護である。あるいは、痛みに対する恐怖心をあおったり、絶望的な気持ちにさせたりする。(たいていは善意からのもの)。
□さまざまな問題について語り合える相手がいない。
□仕事は腰にダメージを与え、危険で有害なものだと信じている。
□非協力的で不幸な職場環境で働いている。
このような思考や生活習慣を選択してしまうと腰痛が長引く可能性が高くなります。
理学療法ガイドラインでも、
腰痛になったからと言って”安静”にするのはNGであり、”活動”をしている方が痛みの改善があると言われています。
上記の点をまとめると、
腰痛の適切な治療を受けるために覚えておくべきこととしては、以下の内容になります。
□レッドフラッグに引っかかる腰痛の場合はまず病院に行く
・足がしびれるだけでなく力が入らなくなった状態
・膀胱直腸障害(排泄のコントロールができない)
□イエローフラッグのような思考にならないように関わっていくことが
腰痛を慢性化しないために非常に重要になる
□腰痛になった場合、”安静”よりも”活動”している方が予後がいい
結論からして、
レッドフラッグが当てはまる場合は、迷わず病院へGO。
それ以外の腰痛であれば、自分が行きやすい医療機関に行くので良いかと思います。
※それぞれの医療機関の特徴なんかは上記に書いた通りです。
腰痛の治療も、セラピストと合う・合わないもあるし、治療内容自体が合う人・合わない人がいます。なので一概にここがいい!とは言えないのが現状です。
4.まとめ
今回は、身体の疑問について書いていくという理念から少しずれた内容になりました。
ただ、腰痛患者を減らすという意味では病院選びというのは非常に大きなポイントになります。
なので、今回はこういった内容を記事にしていきました。
病院や整骨院などが多く存在する現代ですから、治療を受けに行く患者もある程度の知識を持っておくことが大切ではないかと思います。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました!
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