入院中の筋力増強効果ってあるの?

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近年、医療費削減の働きが強まり在院日数の短縮が図られ、どの医療機関でも入院できる日数は減少しています。

そんな状況下で我々リハビリのセラピストは、よりスムーズに身体機能の改善を図ることが求められています。

入院中の患者さんは基本的に体力が低下し筋力も低下傾向になります(廃用症候群)。

そんな患者さんに対するリハビリではほとんどの確率で筋力トレーニングを行っているように思います。

そんな筋力トレーニングですが、一体何を目的に行っているのか?疑問に思うときがあります。

・本当にそれは必要なのか?

・明確な目的を持って行っているのか?

そんな疑問に対して、文献から得られた情報をもとに自分なりの見解をまとめていきます。

1.入院中の筋力増強効果って本当にあるの?

最近の医療施設での一般的な入院期間は1~3か月程度と疾患や患者さんによってまちまちではありますが、維持期や重症患者を除いて3か月を超えることはかなり減ってきている状況です。

つまり、3か月以内で筋力増強の効果はあるのか?」ってことがここでの議論の内容になるわけですね。

ではそのことを踏まえて、筋力トレーニングについて考えていきます。

一般的に筋力トレーニングの期間は最低でも3ヵ月程度行うことが勧められています。

その背景には、筋肥大が生じるのが筋力トレーニングを継続して1~3か月程度かかるからです。

この結果と入院期間を考えると、筋肥大が起こるころにはすでに医療機関を退院しているか、ちょうど退院する時期にあるということあり、「入院中に明確に筋力増強の効果が得られる」ということは少し説得力に欠けるということがわかります。

ただし、”筋肥大が生じているか否か”で判断せずに、もっと広い意味での筋力増強効果の有無で考えていくと「入院中でも十分に筋力は増強している」と言えるようになります。

では、その短期間でも筋力増強効果があると言える原理は何なのでしょうか・・・?
答えは、筋肥大が生じるまでの期間は「運動単位の増加による神経系の変化により、筋力が増大している」ということになります。

この「神経系の変化」に関しては筋力トレーニング初期(4週間前後)に見られる反応であり、これを繰り返し継続することで筋肥大が生じ、さらなる筋力増強が起こるわけですね。

以下の内容は、こちらの文献から抜粋しています。

筋力増強訓練が適切な条件下で継続されれば、発揮される最大筋力は経時的に増加する。

訓練開始から約4週間以内の初期にみられる最大筋力の増加は、筋肥大を伴わないことが報告されており、結果として単位断面積あたりの筋力が増加する。

(運動単位の増加による神経系の変化)

その機序としては主に中枢神経系要因の改善によってもたらされるとされている。

つまり運動単位数の増加、発火頻度の増加・同期化、拮抗筋の抑制、運動プログラムの改善などが関与している。

筋力増強の理論 Jpn J Rehabil Med 2017;54:740-745

以上のことを踏まえると、

・入院中の筋力増強効果は十分にあるものの、筋肥大するまでの効果は期待できない

・筋力トレーニングは退院後も継続する必要性が非常に高い(筋肥大まで至っていないため)

※退院後のセルフトレーニングの指導が重要になってくる

といった結論になってきます。

こういった原理を理解してセラピストは入院中の筋力トレーニングというツールを使用していく必要があると思います。

やみくもに筋力トレーニングだけ続けても患者さんは良くならないし、結果、中途半端な形で退院を向かえてしまう可能性が高くなります。

しっかり先のことを考えてリハビリを提供していくことが大切かと思いますね。

2.では入院中の筋力トレーニングはどういった考え方で行うのがベストか?

ここは持論も含まれてきますが、入院中は筋肥大を目的に筋力トレーニングを行うのではなく、「筋出力の向上や協調的な活動に繋げるためのトレーニング」として行っていくことが最適ではないかと思われます。

先程の文献の一部を再度抜粋しますが、

訓練開始から約4週間以内の初期にみられる最大筋力の増加は、筋肥大を伴わないことが報告されており、結果として単位断面積あたりの筋力が増加する。

(運動単位の増加による神経系の変化)

その機序としては主に中枢神経系要因の改善によってもたらされるとされている。

つまり運動単位数の増加、発火頻度の増加・同期化、拮抗筋の抑制、運動プログラムの改善などが関与している。

筋力増強の理論 Jpn J Rehabil Med 2017;54:740-745

この内容から入院中にすべきことは、以下の項目になるものと思われます。

①運動単位数を増加させるための筋力トレーニング

②発火頻度を高めることを意識した筋力トレーニング

③拮抗筋への配慮(拮抗筋のストレッチやトレーニング)

④筋や動作の使い方・行い方の再学習を促す

これらの項目を意識した筋力トレーニングやその他の訓練を行っていくことが入院中はベストではないかと思われます。

①と②に関しては普通の筋力トレーニングと同様になりますが、運動負荷を高めるというよりはどれだけ対象とした筋に対し意識させるかを重きを置いて訓練を進めていきます。

③に関しては、拮抗筋の影響で主動作筋の出力が落ちている可能性を排除するために行います。拮抗筋に問題があればいつまで経っても鍛えたい筋のトレーニング効果は得られません。

④に関しては、筋力トレーニングというよりは総合的な使い方のトレーニングになるので個別的なトレーニングである筋力トレーニングと相対する部分になるものになります。

以上のように、一言で筋力トレーニングといっても目的を明確にしたものにしていかなければならないわけで、闇雲にトレーニングを行うだけでは良い効果は生まれないということになります。

3.まとめ

今回は、入院期間の短縮が進められている中で、入院中に筋力増強効果は実際にあるのか?というテーマで文献などを用いて検討していきました。

結果的に、入院中には筋肥大を起こすまでの筋力増強効果は期待できないということがわかりました。

当然負荷量によっては筋肥大を起こすまでの筋力増強は得られる可能性が無い事はないと思います。

しかし、リハビリの中でいつまでもいつまでも筋力トレーニングばかりするセラピストはいないと思います。

他にも行うトレーニングは山ほどありますからね・・・

そういったことも考えれば入院中の筋肥大を伴う筋力増強効果は期待できないという結論に至るわけですね。

こういった事実を知識としてもっていれば入院中の筋力トレーニングの考え方が変わってくると思いますし、何より退院後のセルフトレーニングの重要性も実感できると思います。

そういった点を今回ははっきりさせることが出来たのが良かったと思います。

それでは本日はこの辺で。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。