皆さんは「踵を地面につけた状態でしゃがみ込むこと」が出来るでしょうか?
しゃがみ込むときに踵が浮いてくる場合は足関節の背屈制限が疑われます。
※股関節の問題も含まれますが・・・
プロメテウス解剖学アトラス 解剖学総論/運動器系 第3版より引用
背屈制限は捻挫などの足首のケガが原因で生じていることが非常に多いです。
捻挫なんかは若い人でも多くの人が経験しているケガの一つかと思います。
つまり意外と多くの人が気が付いていないだけで足関節の背屈制限をきたしている可能性があるということです。
足首の動きは股関節とも関わりがあり、足関節の問題は全身に波及していきます。
今回はそんな足関節の背屈制限をきたした方に対して、「下腿骨間膜へのアプローチ」有効であった事例をご紹介します。
1.症例紹介
●30歳代女性
●仕事はデスクワークが主(椅子生活)
●10代の頃にバスケで右側の捻挫を受傷している
●腰痛・肩こりあり
●足首の動かしづらさの訴えあり
2.足関節の評価
足関節の背屈角度
椅子に腰かけた状態で足を床につけます。(股関節・膝関節90°屈曲位)
その状態でつま先を上げてみます。
この時に足首がどれだけ背屈できるかを評価します。
症例は、上記姿勢からは背屈が全く出ずつま先の背屈で代償している状態でした。
下肢アライメント
踵骨の回内外:両側とも回外位(特に右側)
外果の高さ:右側が1横指分下制している
筋の固さ:両側とも前脛骨筋の膨隆つよく圧痛あり
しゃがみ込み動作
しゃがみ込み動作を行ってもらうと、
●楽にしゃがめない
●しゃがみ込みを無理にすると踵が浮いてしまう
などの現象が確認されました。
3.足関節の背屈制限についての検討
上記の評価から背屈制限は捻挫から起因したものであると考えました。
捻挫の多くは内反捻挫です。
内反捻挫は足部外側部の靭帯が損傷するのが特徴です。
動きとしては、足部内反の動きで捻挫の際に足底が内側をむきます。
こうして捻挫を受傷して靭帯の強度が落ちた場合、捻挫した方向への制動がきかなくなります。
つまり足首が変位しやすいということです。
その背景をイメージしつつ下肢アライメントを見ると、
●踵骨が回外位をとる
●外果が下がっている(腓骨が下がっている)
●前脛骨筋の膨隆がある(過剰収縮)
などの現象が確認され、どれも足部の内反による影響と判断されます。
まとめると、
捻挫が原因で足部のアライメントの異常をきたし、それが長い年月をかけて筋の固さを形成し背屈制限を来したものと考えました。
4、足関節背屈制限に対してどこにアプローチするか
ここで問題なのは、捻挫してからの時間経過が長いということです。
時間経過が長いということはそれだけ制限因子が強固なものになっていますから
こういう場合は浅層の線維をゆるめてもすぐに戻ります。
しっかり深層への介入をしていくほうが効果が出やすいし、なにより持続します。
上記の点を踏まえて、深層線維への介入を検討しました。
で、候補で挙がるのは、
下腿骨間膜
になります。
下腿骨間膜は脛骨と腓骨の間に位置しています。
この骨間膜の固さが生じると当然脛骨、腓骨の動きに制限をきたします。
脛骨は荷重にかかわる部位なので動きませんが腓骨は底背屈運動に伴い、上下動や開閉したりします。
つまり、下腿骨間膜をほぐしていけば腓骨の動きが出やすくなり背屈制限も改善するということですね。
実際のアプローチの方法ですが、
こちらの記事に詳細を載せています。
しっかり下腿骨間膜をほぐすことが出来れば驚くほど背屈はスムーズに出るようになります。
5.下腿骨間膜をほぐすことで得られた効果
足関節の背屈角度
アプローチ前と比べてつま先の上がり方が改善されていました。
また、足趾の代償も見られなくなっており正常な背屈運動が生じていました。
しゃがみ込み動作
しゃがみ込みはスムーズになっており、短時間であれば踵をしっかりつけた状態でしゃがみ込みが可能になっていました。
しゃがみ込みをもっと改善するには股関節の方にもアプローチする必要がありそうです。
その辺は今回は割愛します。
6.まとめ
今回は、背屈制限に対して下腿骨間膜へのアプローチが有効であった例をご紹介しました。
冒頭でも述べましたが、背屈制限は多くの人が持っている問題になります。
背屈制限があることで腰痛や肩こりを引き起こしていることもしばしばあります。
そういった面も含めて足関節の背屈制限をしっかりケアしていくことが大事であるといえます。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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