今回は、前回の記事の続きになります。
前回はTHA術後の脱臼肢位を理解するために、アプローチ法から学んでいきました。
↓前回記事↓
今回は前回のようなアプローチ別の脱臼肢位理解したうえ(ベースがある状態)で、術後の脱臼と関連する姿勢について学んでいきたいと思います。
として、2013年の論文では報告されています。
どういうことかというと、
「高齢者は腰椎前弯が減少し、立位での骨盤後傾の増大により、cupが過度の前方開角となり、前方脱臼のリスクが高まると言われている」
つまり、骨盤後傾位の進行⇒股関節は伸展位となる⇒臼蓋の被覆率低下⇒結果的に脱臼リスク↑↑
という構図が出来上がるということになるわけです。
今回は、上記内容を詳しく学んでいきたいと思います。
1.THA術後の脱臼リスクについて
THA術後脱臼は高齢者においては、最も頻度が高い合併症と言われています。
80歳以上の高齢者に対する初回THA術後の脱臼率はいくつかの文献から9~12.8%と報告されており、他年代の3倍近くあり、加齢は脱臼のリスクを増大させるとされています。
脱臼に影響を与える因子としては、手術侵入法(アプローチ法)、原疾患、術前可動域、骨頭径などが挙げられます。
手術侵入法(アプローチ法)と脱臼については、一般的に前方侵入よりも後方侵入の方が脱臼の頻度が高いと言われています。
Shethらの報告
⇒PA(後方進入)よりDAA(前方侵入)やAL(前側方侵入)の方が脱臼率は低い
【脱臼率】
●PA(後方)⇒1.4%
●DL(側方)⇒1.8%
●AL(前側方)⇒0.4%
●DA(前方)⇒0.8%
※筋腱切離の少ない前方系のアプローチの有用性を説いている
※手術侵入法(アプローチ法)がよくわからないという方はこちらの記事をご覧ください。
2.THA術後の脱臼リスクを高める姿勢
THAの脱臼リスクについて理解が進んだところで、今回のメインである「THA術後の脱臼リスクを高める姿勢」について掘り下げていきましょう。
とはいっても、冒頭でも説明したように答えは出ていますね。
そうです。
「骨盤の後傾位を取る姿勢」
が脱臼リスクを高める要因として挙げられます。
まず前提として、THA術後の脱臼と言えば以下のようなことを思い浮かべる方は多いと思います。
●THA術後の脱臼リスクは後方系のアプローチで多い
●後方系のアプローチは後方組織の切離を行うため、組織的に脆弱となるため後方への脱臼リスクが高まる
●だから、股関節の深屈曲や内転・内旋などの複合運動が入る動作は術後注意しなければならない
※深屈曲や内旋要素で骨頭が後方へ動くため脱臼リスクが高まる
このように理解していると思います。
今回の記事の中で言いたいことは、「後方脱臼」ではなく、「前方脱臼」です。
そこをまず理解していないと、今回の話の内容がよくわからなくなってしまいます…。
話を戻します。
なぜ「骨盤の後傾位を取った姿勢」が脱臼リスクを高めてしまうのか?ですが、以下に説明します。
高齢になるにつれ、脊柱の生理的な前弯は減少すると、腰部の後弯が進行します。
つまり骨盤も後傾位になるわけです。
その結果、上半身重心は後方へ移動し、骨盤のアライメントに対し相対的に股関節は過伸展位の状態となります。
この状態では、骨盤の後傾が過度になり、結果的に臼蓋被覆が減少するわけです。
※変形性股関節症の患者さんは、この臼蓋の被覆率を高める為に、内旋位を取る傾向にあります。
上記のことが変形性股関節症の進行やTHA前方脱臼の原因となるわけですね。
そう考えると、被覆率を高めたいのに、高齢化に伴って骨盤が後傾していけば、被覆率を高める為の姿勢制御ができず、変形性股関節症のきっかけを作ってしまうことになるわけですね…。
逆に無理に被覆率を高める姿勢制御を取った場合、運動連鎖が破綻し腰部疾患やその他の部位に機能障害を引き起こしてしまう可能性もあるわけですね。
そうですね。
なので、変形性股関節症の患者さんで、頑張って被覆率を高めようと内転筋などが過緊張になっていることが予想され、そこを安易に「固くなってますね~」とほぐしていったりなんてするべきではないことがわかると思います。
やるべきことは脊柱への介入であったりもするわけです。
まずは前後の関係性を理解したうえで必要なアプローチを選択できるようになると良いですよね!
3.まとめ
今回は、THA術後の脱臼リスクを高めてしまう姿勢は?ということでまとめていきました。
上記の内容をみて骨盤後傾の姿勢制御がTHA術後の脱臼に深く関わっていることがわかったでしょうか?
「高齢者は骨盤後傾位を取りやすいため脱臼のリスクは高まることが予想される」
THA術後のリハビリを担当する場合は、このことを念頭に置いたうえで、介入していくことでリスクを未然に防ぐ事が出来ると思います。
また、術後の機能に対するアプローチ内容の幅がグッと広がると思います。
・腰椎の生理的な弯曲は?(なければ後傾位を予想)
・骨盤の可動性はあるの?(可動性:前傾方向に動く要素はあるのか)
・骨盤の前後傾は自分で動かせる?(協調性:変形性股関節症の患者はそもそも動かせると思っていないことが多い)
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
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