どうも。
KABOSUです。
今回は、足関節に関する内容です。
足関節に関する記事はこれまでにいくつか書いてきました。
特に、「背屈制限」に関して取り上げることが多かったです。
今回は足関節の背屈制限でも、一つの原因に絞って記事にしていきたいと思います。
足関節の背屈運動には、「距骨」の動きが必須になります。
距骨が上手く後方に滑り、遠位脛腓関節の間にはまり込むことできれいに足関節は背屈します。
この距骨には筋の付着がなく、筋収縮の影響を受けないようになっています。
※靱帯の付着は存在するため、安定性はあります。
筋の影響を受けないので、比較的運動を障害されることはないように思えますが、
周囲の筋の影響や組織の影響で「距骨の動くスペースが阻害される」ことが多々あります。
今回紹介する長母指屈筋の影響も、距骨の後方滑りを阻害してしまうために、結果的に背屈制限を引き起します。
そんな長母指屈筋の影響を詳しく紹介していきたいと思います。
それではよろしくお願いします。
1.足関節の背屈制限の一因になる長母指屈筋とは?
まずは長母指屈筋の理解を進めていきましょう。
長母指屈筋は足趾の筋で、母趾の動きに関与します。
①長母指屈筋の走行
長母指屈筋は、母趾の底面に付着し、足部の内側を通って距骨の後方を上がり、腓骨に付着します。
②長母指屈筋の作用
長母指屈筋の作用は以下の通りです。
●母趾の屈曲
●足関節の底屈
●足部に対して回外(内反)させる
●足部が固定された状態(荷重位)では、下腿を後傾させる
●足部アーチに対しては、挙上させる働きがある
※アキレスけん断裂後の固定期間中に長母指屈筋県とアキレス腱が癒着する例もある
2.長母指屈筋が足関節の背屈制限にどのように関わっているか?
長母指屈筋のきのうがわかったところで、今度は長母指屈筋と足関節の背屈制限に関係性について説明していきます。
①足関節の背屈時の距骨の動き
図:距骨の後方滑り
図の通り、足関節の背屈時には距骨は後方に滑ります。
距骨が後方に滑らずに背屈した場合、早々に距骨と脛腓関節が衝突し背屈制限をきたします。
このように、距骨の動きが正常に行われないと、背屈制限をきたすことがわかります。
それ以外にも、「脛腓関節の開きが足りない場合」も背屈制限をきたします。
その場合は、脛腓関節の制限因子になる「骨間膜の制限」や「腓骨の下制(正常に挙上が起きない)」などの問題が主因子になってきます。
脛腓関節の問題による背屈制限に関してはこちらの記事をご覧ください。
②長母指屈筋と距骨の関係性
図:長母指屈筋と距骨の関係性
図を見ると分かると思いますが、長母指屈筋と距骨の位置関係的に長母指屈筋が距骨の動きを制限してしまうことになります。
長母指屈筋が正常な筋長を保っていればそう問題は無いのでしょうが、長母指屈筋に異常(過緊張や短縮、滑走性障害)が生じている場合、距骨の動きを抑制してしまう事は十分に考えられます。
③長母指屈筋が距骨の後方滑りを阻害してしまう原因
先程も少し触れましたが、長母指屈筋は距骨の動きを制限します。
では、何が原因で距骨に影響を与えるのでしょうか?
①長母指屈筋の短縮
②長母指屈筋の過緊張
③長母指屈筋腱の滑走性障害
上記3つの原因が考えられます。
この中で最も強く関わっているのは、③の長母指屈筋腱の滑走性障害になります。
滑走が上手くいかないことにより距骨の動きを抑制してしまい、背屈運動を制限してしまうといった問題を引き起こします。
なので、大事なのは長母指屈筋が正常な筋の滑走が起こるようにアプローチをしていくことになります。
3.足関節の背屈制限に長母指屈筋が関与しているかを診るポイント
では、実際に足関節の背屈制限に長母指屈筋が関わっているかどうかを評価するポイントを紹介していきます。
①背屈運動時に、母趾が落ち込む場合
長母指屈筋は、母趾の屈曲に作用します。
純粋に背屈運動が起こる場合、背屈に伴い足趾が伸展すればするほど長母指屈筋が伸長されることになります。
この原則の裏を返せば、
背屈運動時に、母趾だけ伸展せずに屈曲方向に引っ張られるような動きを示す場合は長母指屈筋の問題を疑います。
【判定基準】
背屈運動時に、母趾だけ伸展運動が起こらない場合
(他の4趾はしっかり伸展できている)は、長母指屈筋の問題を疑う
②距骨を押し込みながらの背屈運動をすると可動域が改善する場合
次は、距骨を押し込みながら背屈運動を行ってもらう方法です。
徒手的に距骨を後方に押し込みながら背屈運動を行ってもらいます。
距骨を押し込むことで背屈角度に変化が出るということは、
足関節の後方線維に何かしらの問題があることを示します。
それが、長母指屈筋の問題なのかどうかってことです。
この評価の際に、長母指屈筋以外にも考えていかなければならない問題として、
”下腿三頭筋の過緊張”が挙げられます。
下腿三頭筋の過緊張があると、踵骨を前方に押し出してしまい、結果的に距骨の動きを制限してしまう形になります。
下腿三頭筋の過緊張を認めないのに、距骨を押し込んだ際に可動域に変化が出るのであれば、長母指屈筋が後方から距骨を止めている可能性があるということを考えていきます。
【判定基準】
通常の背屈運動では可動域制限を認め、距骨を徒手で押し込んだ場合の
背屈運動では制限が解消される場合は距骨の後方滑りが背屈運動に
影響していると判断される
③背屈運動時の舟状骨と内果の距離で距骨の後方滑りが起こっているかを判断
図:足関節背屈時の評価方法
長母指屈筋の機能関係なく、距骨の後方滑り自体が生じているか否かを判断する方法として上図の見方も出来ます。
背屈時、距骨が正常に後方に滑ることが出来れば、舟状骨と内果の距離は縮まります。
この距離を評価基準にします。
仮に、距骨が制限されて、代償で背屈運動を行っている場合、この距離が変わらずに足関節の運動を遂行していることになります。
この場合、正常から逸脱した動きになるわけなので他部位に機能異常を引き起こす可能性が出てきます。
【判定基準】
舟状骨と内果の距離が背屈時に近づけば、しっかり距骨の後方滑りが起こっていることになる
4.まとめ
今回は、足関節の背屈制限に長母指屈筋が影響する理由について説明していきました。
長母指屈筋は直接背屈制限に関わるわけではなく、距骨の動きを制限することで間接的に背屈制限をきたしていることがわかりました。
長母指屈筋は深層にある筋で、しかも足趾の動きに関与するものとばかり捉えられがちですが、意外と足関節の動きにも関わっているということがわかりました。
このように、
足関節の背屈が制限されている=下腿三頭筋のストレッチを行う
という短絡的な思考ではなく、もっと総合的に評価をすることが大事であるということを実感できる内容になりました。
次回は、長母指屈筋のアプローチ方法、特に滑走性障害についてまとめていきたいと思います。
それでは本日はこの辺で。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました!
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